隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

谷川・オジカ沢

8/13 谷川・オジカ沢 単独 


駐車場(5:20)→二俣・入渓(6:15~30)→40m大滝(7:35)→60m大滝(7:45)→100mナメ滝(8:25)→大滝落ち口でレスト(8:40~8:55)→三俣・中俣に(9:25)→オジカ沢ノ頭(10:40)→中ゴー尾根下山開始(11:10)→二俣(12:50)→駐車場(13:50)

 

前夜に谷川温泉に到着したが、登山道手前の駐車場は閉鎖されてしまっており、1.5㎞ほど道を戻った公衆トイレの駐車場に止めた。駐車場に気づかず車で登山道に突入するところだった。たるい歩きが増えた。。

翌朝は長い一日を想定して5時出予定だったが、低血圧でうだうだして5時20分にレッドブルを飲みながら出発。谷川沿いの登山道は腐海なので小走り弱程度で急いで二俣手前から入渓した。

少しのゴーロ歩きからすぐF1~3。F1は左から登れそうな雰囲気だったが、登れなかったらすごい時間が無駄になると思い直し、右岸から笹をつかんで巻いた。しぶとくF3手前でいったん沢に戻ってF3だけでも登ろうかと思ったが、水流左の左上バンドをたどって結局巻き気味に上がった。ちょっと時間を無駄に使った。 

沢はV字状となり、逃げ場がないってこんな感じかーとふと思う。小滝を適当に越えていくと8×8mくの字滝。下段は水流左、上段は右のリッジ状を登り落ち口へクライムダウンした。

そのあとすぐ広河原となった。両岸が大スラブ帯となっているなかなか壮観なところだ。奥に40m滝と思しき水流が遠望できる。

40m滝までも小滝を2つ3つ越える必要があった。本当に滝ばかりだな。 

40m大滝は思ったより寝ている。水流右を登ったが、水際に近い岩はいい感じにぬめっていて悪い。ガバガバというほどでもなく、しっかり足を置いて重心移動をしないと滑っちゃいそうだ。水流からもっと右側に離れればより簡単に登れると思われたが、上に行けば行くほど簡単になったのでそのまま水際を登った。ルート中の核心となっている滝だが、Ⅲ級の域を出ないように感じた。でもⅣ級かも。沢の登攀グレードは難しい・・。 

40m滝からすぐに60m2段トイ状、というかゴルジュ状の滝が現れる。これも右壁を登るが、40m滝と異なり壁は完全に乾いており、いわゆる快適なフリークライミングが味わえる。40mほど直登し、上段の水流がもっとも細くなるトイ状のところで右壁から水流をまたいで左壁に移って、左壁を登って抜けた。右から左に移るときふと下を見て、相当な高度感があることに今更ながら気づいた。左に移るには安定したガバだが薄被りを2~3手こなす必要があった。トイ状落ち口にはでかいCSが挟まっていた。 

沢はさらに狭まり数mから10mほどの滝をいくつか越え、100mナメ滝となる。傾斜はない。すごい寝ている。水流左側はどこでも登れると思うが、せっかくなので水流すぐ左を延々と登った。入渓してから休憩していなかったので、60mくらい登ってさすがにくたびれてきた。落ち口でちょっと休憩、と思った。落ち口で15分ほど休み、おにぎりを1個とポテチを3枚食べた。 

100mナメ落ち口から1分で、奥行きはないが両岸が10mくらいの側壁となり、突き当たりは登れそうにない滝となる。これは右岸から簡単に巻き、落ち口へクライムダウンした。落ち口には、どうぞここへと言わんばかりの平らな岩があり、いろいろな記録でジャンプで降りている岩だろう。なんとかクライムダウンしましたが笑。 

ここらで内容のある遡行はぼちぼち終わりかなと思ったが、ぜんぜんそんなことはなく、まだ滝が続いた。すごい沢だ。

15mの登れない滝を右のガレザレから巻き上がると三俣となる。中俣を進むつもりだったが、巻き上がりすぎしばらく右俣沿いにトラバースし沢が近くなったところで右俣にクライムダウン、すこし右俣を登った後笹原をトラバースして中俣に入った。 

もはや源頭の様相。水流は細くなり適当なところで水を汲んだ。水流はザレの染み出しを最後に消え、いよいよ詰めとなった。気持ちの良い笹原を漕いだ。150mかそこらでちょうどオジカ沢ノ頭に飛び出た。

山頂で30分ほどだらだらと過ごした。行動食はほとんど余り、食欲も湧かなかったが、揚げ銀杏150kcalを頑張って水で流し込んだ。 

オジカ沢ノ頭についたのは10時40分だった。6時半の遡行開始から4時間10分。予定では13~14時が目標だったのだが、単独で全部フリーで登るならこんなものかとも思うが、考えていたよりはずっと早かった。雪渓もなかったし。しばらく登ってきた内容を思い起こしながらボーっとした。 

下山は中ゴー尾根を入渓点の二俣まで1時間半ほどで下り、腐海に降り立った。中ゴー尾根登山道の二俣付近は藪漕ぎになるので、ヒルに注意が必要だ。ヒツゴー沢に出て沢下降したほうがよいかもしれない。二俣からも無理に登山道を拾わず沢下降し、登山道が沢にルートをとるところから入ればよいと思う。炎天下の昼の下山だったが1匹靴についた(すぐ気づいて退治した)。以前ヒツゴー沢に入ったときは下山は16時台だったのでヒルがそこら中でぴょんぴょんしていてぞっとしたものだ。

 

さて蛇足だが下山しながら思うところがあった。

 

僕はだいぶ前に独学で沢登りをはじめ、初心者の頃に隣のヒツゴー沢を遡行したことがあった。そのときは駐車場の場所もよくわからずに車で右往左往し遡行開始がたしか10時くらいとグダグダ。いきなり時間に追われ切羽詰まっていたが、それ以上にすごく緊張していた。当時の自分にとってもヒツゴー沢の登攀内容は難しいものではなかったが、それでも一人で沢に入る緊張感でメロメロになり終始頭痛がした。ちょっとした小滝にも足が震えた。詰めでは体力もメンタルも完全に売り切れ、夢遊病人のような歩みだった(と思う多分)。 

何年経ったか忘れてしまったが、そのときはオジカ沢などという難しい沢に行こうとはとても思えなかった。・・が、今回の遡行では昔とは全く異なる自分がいた。集中して落ち着いていたし、フリーで取りついた大滝の中腹で高度感を余裕をもって楽しんでいた(Ⅲ級だからだけど)。

これまでを振り返ってみると、浅薄な独学ゆえに失敗は多かったし時間も相当にかかったが、一人でも沢と向き合い、安全と危険・挑戦と無謀の微妙な振れ幅を意識し、山行を重ねることで成長することはできるのだなと思った。そのように思うことができたのは今回が初めてだった。

 

よい山行だった。

 

 

 

入渓すぐ。向こうにF1が見える。ゴーロ歩きは短い。

 

F1。左から笹をつかんで低めに巻いた。

 

F3を見上げる。結局左上バンドから巻き気味に上がった。

 

谷はせばまりV字状をなす。

 

8×8mくの字滝。上段の水流はリッジ状に隠れて正面からは見えない。

 

広河原。

 

広河原から核心の40m滝が遠望できる。

 

40m滝前衛の小滝。奥が40m。

 

40m滝を真下から見上げた。ルートは右壁だが全体に濡れていて、ぬめっていた。

 

60mトイ状滝。右壁を快適に登れる。

 

60m滝の最上段。落ち口にCS。一番狭いところで右から左の薄被りに移ってCS左に抜けた。

 

そのあとも小滝がどんどん出てくる。

 

100mナメ。簡単だが長くて疲れた。

 

100mナメを下から。

 

両岸が側壁となった10m滝。左から巻き落ち口左の石にクライムダウン。

 

三俣直前の15m滝。右から巻くが小さく巻いたほうがよいと思う。巻きはやや悪い。

 

三俣。中俣がオジカ沢ノ頭へダイレクトに続く。

 

詰めの笹原から登ってきたほうを振り返ると。

 

オジカ沢ノ頭。

 

中ゴー尾根からオジカ沢を遠望。急峻。