隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

オツルミズ沢

10/23 越後 水無川・オツルミズ沢

with S田さん

 

駐車場(6:30)~カグラ滝(7:00)~滝上(7:05)~サナギ滝(9:00~9:10)~滝上(10:00)~80m大滝(11:00~11:10)~滝上(11:35)~駒ヶ岳山頂(17:30)~駐車場(22:00)

 

この山行に先だって、僕は9月中旬に単独でカグラ滝下まできていたのだが、そのときは珍しく1人でいることにどうしても気持ちが乗らず、長いことカグラ滝を見ながらだらだらして、そのまま帰ったっけ。悔しかったなぁ。メンタルが決して強いわけじゃないのは自覚しているが、だらだらしながら、頭のなかでは警報が鳴りっぱなしだった。こんな状態では進めなかった。これは、初心者の頃「豆焼沢大滝」に挑戦したときに、上部のトイ状で支点もとれずに完全に進退窮まり、死にもの狂いでクライムダウンしたとき以来の、心の砕け散りようだった。始まってもいないのに、終わってたなぁ。

そういうわけで今年はもうチャンスがないかなぁと思っていたのだが、たまたまジムで会ったS田さんがご一緒してくれることになり、もう一度行って自分にケリをつけてきた…、いやいや、2人で楽しく遡行してきた。S田さんとは初めて組むのに、初めてがこのオツルミズ沢。10月下旬で寒くなってきたし、荷物を減らして早立ちして日帰りですね。なるべく濡れたくないので、クラシックな高巻きルートでどんどん行っちゃいましょう。最終的に上部で日が暮れても夜間遡行して下山だな。そんな打ち合わせ?を前夜の車内でしたが、結局翌朝の出発は6時半…。

出だしは非常に順調。カグラ滝から小連爆を越え、下部ゴルジュを右岸高巻きで沢に戻り、遠くにサナギ滝が見えたときは、すごいなぁと心が躍った。バーッと登って、サナギ滝の最上段の右岸凹角部分で初めてロープを出した。ロープを出したのはここだけだった。残置ハーケンが3本あり全部使った。

その頃から少々ガスが出てきて天気が予報通り悪化傾向になったが、80m大滝を越えるまではもってくれた。80m大滝では手前の右岸をバンド状に見えたところまで30mほど登って滝のほうにトラバースしたが、このトラバースの2~3歩が最悪に悪かった。多分難しいルート取りをしてしまったのだろう。大滝自体は乾いたⅢ級でバーッと登れた。
この間、どこだったか忘れてしまったが、微妙に泳がざるをえないところがありずぶ濡れになった。

80m大滝を過ぎた11時半ごろから雨になり、急激に気温が下がった。すでにずぶ濡れだったので、雨具を着ても寒くて凍えた。雨ははじめ弱雨だったが、ときどき本降りになった。

ガスガスとなり視界もきかなくなったことから、相当に慎重になりスピードが落ちた。とくに高巻きでは熊笹も足元もすべりまくった。高巻きながら太そうな木の枝に乗って、ガスの切れ目からルートを探ったが、いまいちうまくいかなかった。

また今年は雪渓がまったく残っておらず、よさそうなところはどこでも沢床に下りれる状態であったため、高巻いて一旦沢に下り、やっぱり高巻き直したりした。ただ、色々な記録では通年雪渓に埋まっているところにも下り立つことができたので、時間はロスしたが、普段見れない光景を見れたのはよかった。

おそらくこの一連の高巻きで1時間程度はロスしたように思う。

結局、源頭に至ってオツルミズも終わりかぁと思う頃には日没近くになっていた。雨も止まず、とにかく寒かったので歩を止めるわけにもいかず、粛々と歩いた。もっとも、歩き続けても体が温まることはなかったが。

右岸に郡界尾根が近づいても、視界不良で駒の小屋への踏み跡?は見つけられなかった。すでに日没は過ぎていたが、ヘッデンを点けると濃霧に反射して足元以外見えなくなってしまうので、ギリギリまで点けずに歩いた。いいところでやっとヘッデンを点け右岸の草付を登り、どうやら駒の小屋をだいぶ通り過ぎたらしいところで、ようやく登山道に上がった。そこから数分で、山頂と下山路を分ける分岐点についた。寒くて仕方なかったが、とりあえず山頂には行っておかねばならない。

山頂に到着したのは17時半。即下山にした。ここから駒の小屋に下ってビバークというのは、ちょっと考えられなかった。なにしろビバーク道具はツエルトのほか、サバイバルシートと小ガスしか持っていなかったので。

下山の登山道は急勾配なうえ、降りやまない雨で濡れ、すべりにすべって最悪だった。石や木の根に乗った落ち葉によって、アニメのバナナの皮のようにすっ転んで、2回ザック受身をした。そして、よわっちい体に嫌気が差すが、あんまり寒すぎて指が痛くなってきていた。それでも何も考えずに歩き、21時から21時半ごろ、4時間弱ほどで林道に至った。

駐車場までの帰りの林道は思ったよりも長かったが、いい感じのフィニッシュランだったな。パートナーのS田さんと色々と話しながら歩いて、楽しかったオツルミズ沢遡行を総括した。急だったのにご一緒してくれたS田さんに心から感謝している。初めて組んだにもかかわらず、すぐに意識を共有し、呼吸を合わせることができた。信頼できるパートナーと入れる沢は、どんな沢でも楽しい。一応なんとか日帰りできたし、よい沢登りができたなぁと嬉しく思う。

でもやはり僕は、それとは別に思う。とくに手前と奥の2つのゴルジュ。高巻きながら観察し、登れそうなのも多いかなぁと感じていた。ゴルジュの入り口に立ち、そこに入っていきたいのに、寒いし日帰りだからというのを理由に行かないことに矛盾を覚えたり、中に入っていって駄目で戻って高巻きなら納得できたかなと思ったりしていた。いつかまたここに来ることがあったら、1泊か2泊でちゃんと納得できる形で登れたらいいなぁ。それまでに、もっと頑張ってもっと腕前を上げなければならない。 

 

 

カグラ滝。ここまでは出合いを少しすぎたところにある踏み跡を辿らせてもらい入渓した。カグラ滝は水流右を適当に登り、傾斜が立ってきたところで右の藪に入って落ち口に抜けた。

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カグラ滝上の連瀑ではさっそく結構濡れながら進んだ。ウォーミングアップみたいだった。

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最初のゴルジュは定石どおり右岸高巻き。奥をのぞきたい衝動がふつふつと湧いた。

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高巻き中にゴルジュ内を見れば、結構登れそうな印象だったが、そこは考えずにさっさと巻き進んだ。

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沢に戻り、彼方にサナギ滝を遠望できると、気持ちも上がりバーっと登っていった。

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サナギ滝の直下で軽く休憩。絶景だ。少しだけ戻った右岸に明瞭な踏み跡があり、ハングした下段の巻きは簡単だが、どの高度で滝に近づくかは判断がいる。

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最上段の水流すぐ左の凹角15mくらいの登攀でロープを出した。凹角のガタガタしたクラックを使って登り、3本残置にクリップしてからは左側の露出したカンテっぽい面に出てガバガバを登った。

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サナギ滝の落ち口。景色が最高。

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二つめの深そうなゴルジュも右岸巻き。ゴルジュ入口からすぐ左の壁を登って巻いたが、すこし悪めで落石に注意が必要だ。

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巻き途中で80m大滝が遠望できた。ゴルジュの中にはこれはちょっとなーというハング滝。

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80m大滝は名前がないのが不思議なくらい端正な滝だった。オツルミズで一番惹かれた。

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80m大滝の直下。

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各自フリーで適当にバーっと登った。この登攀は楽しかったなー。

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振り返ると素晴らしい展望が得られた。が、そろそろ天気がもたなくなってきていた。

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すぐ雨になり、それからは辛い山行になった。とにかく寒く、体力を奪われた。

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高巻きの熊笹もびしょびしょで、軍手で掴むのは大変だった。

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藪も紅葉していると親しみが湧くかな、と思わなくもなかったが、うーん、藪は藪だな。

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雪渓にいつも埋まっているであろうポイントに下りたが巻き直した。圧迫感のある空間だった。

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源頭の雰囲気になり、粛々と歩いた。

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夜の帳が下りてきた。晴れの昼間なら、きっと気持ちの良い開放感のある源頭の散歩だったのだろう。

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越後駒ヶ岳山頂。もう低体温かってくらい寒かったが、心がすごくフラットで、落ち着いて山頂に至ることができ、最高に楽しい遡行になった。

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