隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

南アルプス 尾白川・黄蓮谷右俣

9月3日 尾白川黄蓮谷右俣(ただし千丈滝上から入渓)

with Sさん

 

 竹宇(2:30)~黒戸尾根5合目(5:45)~黄蓮谷・千丈滝上(入渓)(7:20)~稜線(13:00)~山頂(13:05)~七丈小屋(14:30~15:00)~竹宇(17:30)

 

黄蓮谷を日帰りというわけで、長い行程を考えて入渓は、Sさんのプランで左岸林道の奥からではなくて、黒戸尾根5合目から下降してとなっていた。2時半に竹宇を出発して黒戸尾根を歩き始めた。日帰りなので荷も軽く、また闇の中ヘッデンの光だけで歩くのは気持ちよい。3時間少々で5合目に到着し、踏み跡を下降した。しかし踏み跡は途中からよくわからなくなった。ふざけているわけではないが、僕は地形図も遡行図も何も持っていなかったので、当たり前だ。Sさんが携帯GPSに誰かの軌道をダウンロードしているようで、それに従って適当に修正して下降した。黄蓮谷に着き、その流れを目にしたときは、正直のところ非常に落胆した。尾白川下流を何回も見ているので、こんなにチョロチョロのところから入渓になるとは、と。これでは沢登りとしては、尾白川に行ったとは言えないと思ったほどだ。

この週末は、もともと僕は谷川の沢に単独で行こうとしていたが、悪天で結局直前にキャンセルせざるをえなかった。それと前後してSさんからお誘いいただいており、心がいまいち切り替えきれていなかったが、前日に急きょSさん計画の黄蓮谷にご一緒させていただくことに決まったのだった。家族行事などが重なり、ドタバタで準備したので、昭文社マップだけがザックに入っていた程度。もっとも、黄蓮谷日帰りは、自分の「行こうリスト」にもともと入っていたプランであり、いいタイミングがあればトレーニング的に行こうと思っていたので、特に不安もなかった。

さて、千丈ノ滝の上から入渓し、ほとんど靴を濡らさずに飛び石で歩いていくと、すぐに登れそうにない滝。右から巻くが、尾根状の平らな幕営適地があり、そこで驚いた。焚き火の跡だらけだ。自分の沢仲間は、焚き火は大好きなので必ずするが、跡はなるべく消して原状復帰するのが当たり前の共通認識だったが、ここはまるで小川山のような光景だった。尾根なので致し方ない面もあるとは思うが、日帰りでなければ掃除しておきたいところだった。激しく萎えた。焚き火跡でいえば、ここだけでなく、もっと上流の適地でも何か所も焚き火跡ほったらかしを見た。黄連谷は焚き火跡はそのままに、というルールでもあるのだろうか、というくらいだった。

想像していた沢登りにならなくて、意気消沈気味ではあったが、核心とされる奥千丈ノ滝は楽しく水流沿いを登った。最初の細い連瀑状は適当に登れるが、その上から逆走のスラブとなり、アンダーホールドやパーミングを駆使したフリクションライミングとなって、ヌメリもあって、これはこれでテクニックも問われ悪くない。Sさんは右岸の巻き道を拾ったようだ。傾斜がさらにたつ最上段の手前でSさんと合流し、ここからは一応ロープを出して・・・となるかと思いきや、日帰りで先を急ぐから巻きで、とのこと。はい分かりました。確かに日帰り優先ではあるので、残念だが以降は巻き巻きで進んだ。そのため沢登りというか、ほとんどただの登山のようになってしまったが。

結局、SさんのGPSを頼りに、踏み跡を探してたどる旅を粛々と進め、13時ごろに稜線に到着した。そこからものの数分で甲斐駒ケ岳山頂。25年以上前に初めて踏んでから、何回踏んだか分からない、慣れ親しんだ山頂。黄連谷の沢登りは正直イマイチだったが、それも大好きな山頂に来れば全て忘れ、最高に楽しくなってしまう。Sさんとかたく握手して、標識に抱き着いておかしなポーズで何枚も記念写真を撮って、下山を急ぐのでさっさと歩き出した。七丈小屋で花谷プロと少しだけお話させていただき、今日一番の大休止をとり、あとは適当に黒戸尾根を歩いた。最後の竹宇まであと高度4~500mくらいのところで、いろいろ我慢できなくなり走って下山した。下山してみれば、まぁ悪くない15時間だったなぁと思った。

黄蓮谷・・。明瞭な踏み跡が多く、それを拾っていけば沢登りの難しさはあまり無いように思う。普通に登山のように登れるだろう。大きな滝や連瀑帯も巻き道から眺めるのみ。その点では本谷のほうが遡行の楽しさにあふれている気がする。(特に岩小屋での幕営は思い出に残っているなぁ。)

そして焚き火の不始末。これは人それぞれの考え方の問題なのだろうか。あらゆる沢登りの本には「後始末をする」と書いてあると思うが。今回は日帰りだったし、何もできなかったが、いつか泊まりで来ることがあったらキレイに掃除したい。やはり美しい沢をなるべく自然のまま遡行したい。そこに人の残した夾雑物は要らない。幕営適地は飲み屋ではない。焚き火の跡がそのままということは、燃え残りのチェックなどもしないということだろうか。それが再利用され、さらに放置されれば、もうそこはゴミ箱といっても過言ではないだろう。僕はそのように考えている。歯磨きのうがいを飲むとか、ウンコは埋めるとか、普通の登山のマナーの一つではないだろうか。

ともあれ、来年も甲斐駒付近に源頭を発する沢に入りたいものだ。行きたいルートはたくさんある。焚き火セットと一緒に掃除グッズも持っていこう。