隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

吾妻連峰 塩ノ川

6/23 吾妻連峰・塩ノ川 単独

 

吾妻連峰の沢3選として、中津川、松川、そしてこの塩ノ川を聞く。中津川は(中退の結果だったが)数年前行ったことがあった。この週末は晴れそうなのが東北だったので、時期的に早い気もしたが、日帰りで行けそうな塩ノ川に行ってみることにした。調べが足りず、塩ノ川のことはあまり知らなかった。何となく難渓という印象を抱いていて、水量も多く登攀も多そうと思い、色々ギアをジャラジャラさせていってしまったが、少なくとも上部に関しては、そういうところではなかった。吾妻らしい古典的な沢登りが主体であり、渓相にさまざまな変化があり、見所が豊富なすばらしい渓谷であった。今回は上部のみの遡行ではあったが、日帰りでこんな渓谷の小さな旅ができれば、もう充分であろう。とても満足である。

塩ノ川へのアプローチは、豊富な記録を掲載してくださっているサイトである『沢の扉』を参考にさせていただき、貯水池からとした。ブッシュが両側から迫ってくる狭い林道を進み、貯水池の近くのスペースに車を止め、歩き出した。林道最奥の右から小さな赤布で示された踏み跡を歩いていくと、塩ノ川左岸の登山道についた。入渓は登山大系に記載されている登山道の渡渉点から、と思っていた。しかし、登山道を200m弱下って830mの渡渉点に着き、準備している時に、途中で落とし物(ライジャケ)をしてしまったらしいことに気づいた。下った登山道を登り返して探し、回収できたが、無駄に時間を使ってしまったため、徒渉点からの入渓は諦めた。なお、念のためと思って持ってきたライジャケはまったく不要だった。登山道を下降ポイントを探しながら少し登ると、急斜面を降りている獣道があったのでそれを拾い、1000m弱付近から入渓した。

序盤は「くらげ滝」「あじろ滝」「銚子滝」「やお滝」などと名前の付いた4つの大滝をつなぐ、古典的な巻き主体の沢登りである。どの滝も豪快に水を落としている。巻きは、ぐずぐずの斜面をズルズル滑りながら、四つん這いでがんばって登る感じで、ちょっと悪めである。なお、大滝は真っ青な大釜を持ったあじろ滝が一番迫力があった。滝に関しては、一番の見所であろう。なお、遡行中は滝の名前がどれかなど、この地域に関して門外漢の自分にはわからなかったが、アプローチと同様『沢の扉』の詳しい記録を拝見して同定できた。貴重な記録を載せてくださったことに感謝したい。

さて、大滝の巻き以外でも、ちょっとした小滝も大きな釜を持っていたり、キレイな淵も点在しており、望めば泳ぎながらの遡行もできる。火山の成分のせいか、水は白っぽく濁っており、水深がいまいち掴みづらかったが、がんばってへつってみると、意外に水中にスタンスがあることが多く、泳がなくても済む場合も多かった。淵は水勢も強くないので、もちろん泳ぎたければ泳げばよい。巻きはぐずぐずなので、へつったり泳いだり、のほうが労力少なめで済むと思う。ほどよくゴーロや連瀑帯を織り交ぜ、飽きることなく遡行できる。

その後、地形図の1330mの滝マークの地点が近くなるにつれて、急に足元の岩に緑色のコケが増えてきたなと感じられる。滝マークは10mの枯滝で、その釜はこんこんと湧いているらしい緑色の水をいっぱいに湛えていた。緑の釜を見ていると、歩いてきた塩ノ川にこの緑の水が流れ込んでいたとは、にわかには信じられないほどであった。沢の様相も一変した感がある。とにかく、とても印象的な場所だったので、ここで休憩とした。水中は何かの藻みたいなのが大量にうようよしており、微生物の活動がものすごく盛んなのだろうか。それよりも、茶色の羽虫の大群が飛び回っており、防虫ネットがなければ1秒も居られないほどである。印象的な場所だったので休憩にしたのだが、正直のところ登るよりもがんばって休憩した(?)。

10m枯滝は左側を直登したが、すぐ上にも10mほどの枯滝があり、これは右側を登った。その後、沢は伏流し水のないゴーロを歩くと、すぐ20m枯滝につく。これは登れるようなものではなく、右から巻いた。その上では、雪代の床という、美しい石畳状の伏流帯となる。沢の音のなくなった静けさのなか、両岸を樹林に囲まれた乾いた石畳を歩くのは不思議な気分である。1440mの2俣を越えると、40~50mほどに見える、大きな枯滝となった。この枯滝は下部は傾斜もなく容易だが、上部はすこし高度感もあり、気を付けて右側を登った。

枯滝を境に、沢は伏流したままであるが、赤土が多いのか、岩は赤っぽいものが多くなり、火山を思わせる渓相となった。1530m付近で、これも非常に印象的な3mほどのCSがあり、右側をむりやり登った。このCSを過ぎると、いよいよ塩ノ川も終わりが近くなる。一気に両岸がひらけ、右側には吾妻小富士の斜面が広がり、左側の前方には東吾妻山と思われる山稜が遠望できる。この頃から沢は水が復活し、火山らしい赤い水流がちょろちょろと流れている。車の音や、観光客の嬌声が遠くから聞こえ出し、向こうに橋が見えた。沢を横切る登山道に気づかずに通り過ぎてしまったようだが、磐梯吾妻スカイラインに到着し、遡行を終わりにした。

遡行終了が12:40と、時間にゆとりがあった。沢のほとりでゆっくり休憩しながら装備を解いてザックに仕舞った。以前、家族旅行できた浄土平ビジターセンターを懐かしく眺め、そのときは天気がイマイチで足をのばさなかった吾妻小富士を登ってお鉢巡りをした。お鉢では風が強く、小さな子供は飛ばされてしまいそうな勢いであった。

下山は昭文社マップのいう点線登山道の浄土平・仙水沼登山道である。この登山道は正直言ってまったくオススメできない。歩き出しは笹が刈り払われており、ガレ場の通過も赤布で迷うことはない。しかし、整備は仙水沼の手前あたりで急に終わりを迎え、そこからは踏み跡は急に細く、また濃い笹薮で不明瞭になった。沼付近でどうやら踏み跡をロストしてしまった。戻ったがよく分からない。吾妻らしい変化のない地形に深い樹林帯であり、読図は非常に難しい。それでもあたりを付けて歩くと、踏み跡っぽいところになったり、またロストしたりである。1300~1250mくらいまでは不安定に歩いたが、それからまた踏み跡が濃くなり、笹が刈り払われているようになり、事なきを得た。この登山道の整備具合は実に謎である。人を歩かせたいのか、歩かせたくないのか・・・。仙水沼付近では、正直いってちょっと不安になったりもしたが、無事下山できてよかった。

塩ノ川はすばらしい名渓であった。豪快な大滝、緑の湧水から枯滝や伏流帯、火山らしい赤い沢、渓相の変化は日帰りで行ける沢とは思えない、豊かさである。機会があれば、今回割愛した下部流域にも足を踏み入れたい。しかし、下山で使った登山道は好きではない。GPSを必ず携行すべきである。 

 

駐車スペース(6:00)~~830m登山道徒渉点(6:25)~登り返し・1000m付近入渓(7:00)~あじろ滝(7:30)~銚子滝(9:20)~10m枯滝(10:50)~50m枯滝(11:30)~CS(12:15)~磐梯吾妻スカイライン(12:40)~吾妻小富士(13:15-13:50)~下山開始(14:15)~駐車スペース(16:05)

 

林道の一番奥。この右側に赤布があり、踏み跡が伸びていた。

 

830mの渡渉点。ここから入渓したいところだったが・・。

 

1000m弱から入渓した。

 

くらげ滝。右から巻いた。

 

そのすぐ上にも豪快に水流を二条に分けた滝。これには名前がないようだが、それが不思議なくらいキレイな滝だった。左巻き。 

 

最初にあったこのキレイな淵は泳ぎへつりで通過した。

 

上の写真の2~3mくらいの滝の落ち口。

 

これは確か右を泳ごうとしたら、水中にスタンスがあって普通にへつれたっけ。その上が連瀑になっていて、水流の細いところをジャンプで越えた。 

 

これも左を泳ごうとしたら、水中にスタンスがあって、普通にへつれたなぁ。

 

感じの良い連瀑帯であった。 

 

あじろ滝。 青い大釜を持っていて、とても印象的な感じ。ちょっと休憩タイムに突入であった。

 

あじろ滝。 

 

また淵。水が火山成分のせいか、ちょっと白っぽい。 

 

銚子滝。左巻き。 

 

やお滝。左壁を容易に登れる。 

 

3条に水を落とす小滝。 

 

左岸から支流。 

 

泳いだ淵。 

 

急に緑のコケが増えてきたなと思ったところである。 

 

まだ途中であるのに、源流感があり、不思議だった。 

 

10m枯滝。釜は緑の湧水。藻もすごかったが、虫がとにかくすごかった。左を登った。

 

絶対に入りたくない感じの緑水。 

 

10m枯滝の落ち口から見下ろした。 

 

10m枯滝の落ち口から上を見た。上にも10m弱くらいの枯滝となっており、これは右を簡単に登れる。 

 

10m弱枯滝の落ち口から見下ろした。 

 

沢は伏流し、ゴーロを歩く。 

 

20m枯滝。右巻き。 

 

20m枯滝の落ち口から見下ろした。釜だけ少し水たまり。 

 

雪代の床。静かで、とてもいいところだった。 

 

2俣。 

 

40~50mの枯滝。 

 

枯滝の上段。 

 

ないと思っていたが、1か所だけ残っていた雪渓。 

 

また渓相がかわり、火山感が強くなった。 

3mCS。右側を両手サイドプッシュでずり上がった。 

 

視界が開け、終わりが近いと感じさせられる。右は吾妻小富士の末端。 

 

赤い小沢となった。 

 

向こうに橋が見え、磐梯吾妻スカイラインに出て終了した。 

 

吾妻小富士をひやかした。 

 

お鉢巡りである。風がえらく強かった。 

 

お鉢巡り途中で、出発点の貯水池が見えた。右側には仙水沼らしきものが。そうか、これを下山かー、あっという間じゃないかなー、とその時は思った。 

 

下山を歩き出し、ガレ場の通過。真新しいテープが随所に貼られており、迷うことはないだろう。この右下は塩ノ川が流れている。 

 

まだ笹が刈り払われており、問題ない。が、刈り払われた大量の笹で登山道は埋め尽くされており、歩きにくい。 

 

急に整備は終わり、不明瞭な踏み跡となる。まれにテープがあったりなかったりで、まったくオススメできない。軽装なハイキングの人が迷い込んでしまったら、非常に危険だろう。