隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

安倍奥・白沢大滝

7/1  安倍奥・白沢大滝、大滝登攀 with Okさん

 

宮崎に一緒にクライミングに行ったOkさんと、沢登りにご一緒できる機会に恵まれた。Okさんは日本のクライミング黎明期から登っているリアルレジェンド。朝発日帰りなので、それほど遠くには行けないが、ここぞという時に行こうと思っていた安倍奥・白沢大滝を選んだ。このマイナーな大滝は、すばらしい記録をたくさん掲載してくださっているサイト『山やへの扉』の記録を拝見しなければ、来ることができなかったものである。貴重な情報を公開してくださったことに、まずは感謝したい。

 

スイッチバックもある白沢右岸の狭い林道を奥まで進み、ものものしい堰堤付近のスペースに車を停めて、歩き出した。

f:id:Kakuremino:20180703225247j:image

 

茶畑を過ぎてすこし歩くと、沢へ降りていく朽ちかけた木の階段があり、そこから入渓した。白沢はそれなりに水量もあり、渓相は小さな南アルプス南部そのもの。巨岩の間をずり上がったり、小滝をかるく水を浴びながら登ったりと、ゴーロ歩きも楽しい。下流域では、わさび田などに伸ばされているとみられる取水ホースがあり、生活に密着した沢であることがうかがわれた。左岸が小さな尾根みたいな感じになっており、ちょっと登ってチラ見してみると、わさび田の(?)モノレールが通っており、作業用の踏み跡もあるだろうから、帰りは時短できることだろう。
f:id:Kakuremino:20180703225338j:image

 

まったくの余談だが、シャッター優先が使える一眼カメラを使い出して、水の流れを出すために下のようなスローシャッターでの写真を撮ってみたが、見た目は綺麗ではあるが、これだと水の勢いや量がイマイチ分からない。
f:id:Kakuremino:20180703225334j:image

 

やはり記録写真としては、今まで通りこのように早めのシャッタースピードで撮るのが適切と言えると思う。

f:id:Kakuremino:20180703225931j:image

 

さて、二俣を分け、左俣に入るとほどなく両岸が迫ってきて、ゴルジュのなかに数mの小滝が2本出てくる。どちらも右岸を登ったが、途中からゴルジュの向こうの光の中に、大滝と思われる水の流れが見えてくる。なかなかドラマチックな大滝との出合いに、自然と笑みがこぼれた。
f:id:Kakuremino:20180703225244j:image

 

少なくとも100mはありそうな白沢大滝である。思ったよりもずっと立派な佇まいである。滝は大きく上下段に分かれているようだ。下段の落ち口は広くテラスのようになっていると思われたが、基部からは見えない。今日は基部で支度してザックはデポ、のお気軽登攀である。クライミングシューズを履き、濡れる気満々で雨具を着込んだ。暑い!
f:id:Kakuremino:20180703225310j:image

 

じゃんけんで負けて、Okさんが1p目をリードで取り付いた。が、意外なことに、Okさんはクライミングシューズで滝登りするのが始めてだったらしい。全体的にぬめっており足置きに不安がある、とのことで水流左のラインは厳しく、いったん降りてきた。
f:id:Kakuremino:20180703225326j:image

 

Okさんは慣れた沢靴に履き替え、交代して僕が1pを登ることになった。水流ぞいをある程度上がって、ホールドがつながっていそうな箇所を右のブッシュに抜けられそうに見えなくもなかったが、自分も登れなかったら時間のロスがなぁ・・と逡巡し、結局もっとも簡単そうな水流右の藪を登った。Ⅲ級かそれくらいの50mである。基部からだと、下段落ち口のテラスまでは届かず、途中のフェース面で切った。
f:id:Kakuremino:20180703225314j:image

 

下段落ち口は大きな広場になっており、そこから上段を見上げた。
f:id:Kakuremino:20180703225301j:image

 

2p目は改めてOkさんが登った。シャワーでも面白そうだが、明確なルートに見える水流右の凹角を直上し、小テラスで切った。この2p目はキレイに露出しており、リードで登ったら気持ちよいものだろう。凹角はすっきりした好ピッチであり、Ⅳ級くらいであろう。凹角もよかったが、これだけキレイな滝であれば、無駄に水を浴びながらラインを探ったりしたくなるのもまた、偽らざる本音である。
f:id:Kakuremino:20180703225322j:image

 

3p目は僕の番である。この小テラスから右上に見える木まで登るのだろうなぁ、と見て取れる。しかし、木に向かって直上すると笹つかみ登攀になり面白くない。無駄に左の痺れるフェースをじわじわ登り、水流を見ながら、ひょっとしてこのまま落ち口まで伸ばせるんじゃなかろうか、などと妄想したが、いかんいかん自分勝手はよくない、Okさんに登ってもらおう、と殊勝に考え直して、右の木で切った。20mくらいのつなぎのピッチである。
f:id:Kakuremino:20180703225251j:image

 

核心の4pはOkさん。時間をかけてじりじりとロープが伸びている。フォローで登ってみると、クライミングシューズだからさほど気にならないスタンスであるが、リードで、しかも沢靴だと結構シビアだっただろうなぁ、という感じである。ホールドは全体的に悪くはないが、スタンスが1歩外傾していて悪い箇所があった。プロテクションは右壁にカムでも、薄刃ハーケンでも、いい感じに取れるのが幸いである。このピッチは、他の滝では体験できない内容であり、この白沢大滝だけのすばらしいピッチであった。40mⅣ+~Ⅴ-くらいであろう。
f:id:Kakuremino:20180703225318j:image

 

落ち口である。帰りは右岸の藪を少しこぎ下って、よさそうな木で懸垂数ピッチで基部まで下りた。白沢大滝を振り返ると、今回のルート取りで、1pを水流に突っ込まないならば、2、4pの偶数ピッチに登攀内容が凝縮されているといえる。つるべよりも、1・2p、3・4pなどと分かるのがよいと思う。
f:id:Kakuremino:20180703225330j:image

 

さて、帰りは左岸のモノレール付近に付けられた踏み跡を拾って下山したが、わー、現役のわさび田見るのは久しぶりだなぁ、などと楽しく歩いていたが、喜びも束の間。車について普段着にお着替えしていると、ヒルが何匹も体を這っている!二人で悲鳴を上げた。幸い下山中に付いたものなので血は吸われなくて済んだが、念入りに探して退治した(しかし家で靴を干そうとしたとき靴にまだ1匹いた!)。実のところ、僕はまだヒルの被害にあったことがないのである。今後も吸われないままでいたいが・・、8月の会越でチャドクガにやられて血混じりの水ぶくれだらけになったよりは、マシかな。
f:id:Kakuremino:20180703225257j:image