隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

八ヶ岳 立場川ノロシバ沢

9/7 八ヶ岳 立場川ノロシバ沢 単独

 

予定していた長期山行が超大型の台風であっけなく中止になり、増水していても大丈夫そうな沢を無理くり探して選んだ。それがこの沢である。そういうわけで、やる気に満ちているわけではないが、八ヶ岳の沢なんてこんな機会でもないと一生来ない気もするから、まあ運命だろ。

なにしろ私は冬季の登攀ごともほとんどやらないので、舟山十字路も初めてだ。行儀よくそこに車を停め、林道を下るとすぐ広河原沢。台風の影響とみられ、倒木が道を塞いでいた。広河原から最初そのまま立場川に入渓してみた。まだ増水気味なのだろうが、なんら問題ない。単調な河原なので、左岸の立派な林道を拾いなおして旭小屋まで歩き、そこから入渓し直した。

 

最初の2連堰堤は左岸のフィックスロープで巻いた。

 

そのあと地形図に載っていない堰堤が出てくるが、これは右岸の踏み跡から高巻いた。木で懸垂してもよいだろうが、私の手持ちロープでは10mちょいしか懸垂できないので、下りれそうなところは無いかと巻き進むと、枝沢から踏み跡が下りており、フィックスロープも張られていた。

 

立場川本流は踏み跡ばっちりの荒れた河原が続くが、苔むして一瞬きれいなところもあるし、ゴルジュっぽくて薄暗い陰鬱なところもあるし、なにより岩はフリクションがよくて、なかなか快適遡行である。いかにも八ヶ岳ってわけ。今日はまったく濡れる気もなく、往年のありがたい踏み跡を拾ったりしながら歩いた。その気になれば足元もほとんど濡らさないでもいけるんじゃないか。それじゃ沢登りでここに来ている意味ないか。

 

途中でカメラのキャップを失くして血眼で捜索したが見つからなかった、などと、ガックリモードの気分ではあったが、2時間もかからずノロシバ沢との二俣についた。休憩タイム。ノロシバ沢出合は通常伏流かちょろちょろのようだが、今日はさすがに水がすこし出ていた。

 

こちらは左俣の本流。

 

ノロシバ沢の荒れた河原を歩き出すと、すぐに入口ゲートみたいな超短いゴルジュ。その後また荒れた河原を歩く。

 

荒れた河原から、ナメ滝を挟んで、大系に記載された二俣に至る。

 

ゴルジュの始まりの滝。ここから緑のV字に囲まれた小滝が連続するゾーンになる。

 

最初のこの滝は、どうやって登ったかまったく覚えていないので、簡単だったのだろう。

 

これは水の右側を登ったような・・・。

 

面白い形の二俣。右俣のような支流はやがて崖や急斜面に消えていくのだろう。沢は完全V字なので小滝といえど巻くことは叶わない。正面突破していかなければならない。

 

これが大系の核心のCS8mだな。これもどうやって登ったか覚えていない。なんてことだ。登った時は記録に書くようにしっかり覚えておこう、などと殊勝に考えていたのに。でも確か水流沿いを普通に登ったっけ。

 

この二俣にかかる小滝はちょっと悪かった。水流沿いが突っ張りで登れそうだったが、なにしろ濡れたくないので、倒木を使って右俣にいったん上がり、そこから左俣へと渋い5歩ほどのトラバース。トラバースはちょっと悪くて怖かったなぁ。

 

簡単。

 

上の小滝を登るとこのCS4m滝が現れる。これがゴルジュ最後の滝である。これがとっても悪くて、相当頑張った。ルートはボロボロの右壁である。手前のほうにホールドがつながっているところがあり、そこからCSの高さくらいまで上がり、CSに向けてトラバース6~7歩ほど。最後はCSに足デッド・・。5.8くらいはあるんじゃないかと思ったけど、ボロボロだから形状はすぐ変わっちゃうんだろう。残置があるそうだが、まったく気が付かなかった。帰ってから写真を拡大して見て気が付いた。しかしこんなボロボロの壁では、残置を使うのも怖いだろうなぁ。

 

その後空が広くなる。

 

奥の二俣。左俣はガレに消える。西ギボシの岩稜が見える。休憩タイム。

 

奥の二俣からちょっと進むとまた二俣になっており、水があった右俣に誘い込まれるように進んでいった。右俣はナメ滝からすぐ緑のV字で土くれ細ルンゼと化すので、間違いに気づいて左俣に進んだ。水枯れし、いかにもルンゼといった様相となる。もろいが、フリクションはばっちりである。

 

ルンゼの登りが終わるとガレ。

 

稜線直下の二俣。明らかに右俣に進むのがよいのが見て取れるが、時間に余裕もあるし、西ギボシへと伸びる左俣をちょっと覗いてみることにした。

 

ガレの堆積地帯を軽く登ると、西ギボシのピークへ伸びていると思われるルンゼが正面に見え、右手は崩壊した斜面が稜線まで広がっていた。

 

右手の崩壊斜面。こちらを登って稜線まで抜けようと思ったが、登るほどにボロボロになっていき、不確定要素が大きい。稜線直下で斜度が増すポイントがあり、そこで止めて下降した。

 

下を振り返った。

 

右を見やれば崩壊した急斜面を挟んで稜線が見えているのだが、引き返すが吉ですな。ちなみに写真右上にちょっと見えているピークがノロシバ。

 

右俣を進みなおした。左側へ行くとさっきの崩壊した斜面に出てしまうので、右側のブッシュへ近づき、最後はブッシュをつないで登った。踏み跡もある。

 

登山道。左のピークは西ギボシ

 

そのまま下山してもよかったが、せっかく久しぶりの八ヶ岳だしと思い、超狭いノロシバ沢の集水域にあるピークを踏んでおいた。こちらはギボシのピーク。久しぶりに赤岳を見れて満足だな。

 

一瞬、あの権現岳も行こうかと思ったが、足がもはや棒であり、きれいに諦めた。

 

帰りの登山道からギボシをのぞむ。

 

こちらが西ギボシのピーク? 真ん中左に見えるのがノロシバ。その左に青年小屋。右上のなだらかなピークが西岳。

 

登山道から振り返って、西ギボシを見る。あんなとこにいたんだぁ、と思った。ありゃ登っちゃだめなとこだ。ちょっと罪をおかしたみたいな気分になった。

 

用のない青年小屋を素通りし、西岳をへて登山道を下山した。感じよい登山道だったなぁ。なお信玄の隠岩から広河原までの点線ルートは判然としなかった。登山道の道標は1688mへの分岐につけられており、そこを曲がって踏み跡をたどったが不明瞭になり、あたりは踏み跡だらけとなった。その後下り気味に歩いていると、本来の登山道と思われるちゃんとした道に出た。

 

ノロシバ沢は八ヶ岳という立地もあり、なかなか異質な沢登りができる。それが好きか嫌いかは人それぞれだろうが、個人的には結構よかったな。なんでもいいのである。もっと早出して頑張る気があれば、稜線から赤岳、阿弥陀岳まで縦走して中央稜を下山すれば楽しいだろうなぁ。でもノロシバ沢は短いが、決して簡単な沢ではない。ボロボロだし、滝は巻けないので登るしかないし、要所要所できちんと頑張らないといかん。そういうわけで稜線まで着いたら、疲れたからもう帰ろ、となるだろ。権現岳まで行けたら、などと考えていたものの、私もギボシまで行ったのがせいぜいなのである。

 

舟山十字路(7:45)~旭小屋から入渓(8:20)~ノロシバ沢出合(10:00-10:20)~二俣(10:40)~奥の二俣(11:30-55)~稜線(12:55-13:05~ギボシ(13:25-40)~西ギボシ(13:50)~ノロシバ(14:00)~西岳(14:50-15:05)~舟山十字路(16:40)

装備:ハーケン3・ハンマー、補助ロープ25m