隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

一ノ倉沢本谷~4ルンゼ

9/17 谷川・一ノ倉沢本谷~4ルンゼ

with Oさん

 

“幻の大滝”を拝みに、いや登りにいってきた。今年は雪渓のかけらもなく大滝は露出しており、狙っているクライマーも多いのではないだろうか。ルートは左壁の右上バンドをとったが、汚れ具合からおそらく今シーズン最初の遡行ではないかと思う(少なくとも左壁ルートは)。

雪渓が消えてから日がそれほど経っていないからか、ルートはヌメりとジャリジャリで思ったよりも悪かった。というかいい感じに痺れた。スローパー状の棚ホールドを持ってのハイステップ立ち込みと、向きの悪いホールドでのワイド登り的な乗越しムーブと、2つ印象的な悪いムーブがあった(Ⅳ+)。スローパー棚には浮石と泥砂利が大量に堆積していたのを掃除したので一雨降れば登りやすくなっているかもしれないかな・・? 素手で登ったので爪の中まで真っ黒になってしまった。いつもは軍手だが流水で濡れていないところはちょっと軍手では・・。手が終始滑りそうだった。

プロテクションは残置ハーケンもいくつかあるが、小さめのカムで取れた。マスターカム0~3を使った。

40m弱ほど、落ち口よりさらに左壁をトラバース気味に進み、テラスっぽくなっているところでカムとハーケンでピッチを切った。

 

最大の目的だった幻の大滝が登れたのも本当によかったが、本谷の壮大かつ急峻な大スラブ帯もまた素晴らしかった。まことに異質な空間だった。一ノ倉出合いの広場から真正面にどーんと見えた白い岩の谷に今いるのだと思うと、なにか不思議な感覚がした。うまい言葉が見つからない。たぶん一ノ倉がもつ歴史や空気に無意識に圧倒されていたのだろう。

春夏秋冬のこの谷を知り尽くしている?Oさんは、夏に2回しか来たことのない僕などとは全然違う一ノ倉が見えているに違いない。大滝を抜け、左に滝沢下部を目前にし、積雪期にはどでかい下部のほとんどが雪崩で埋まると聞いても、僕にはそれを写真で見たレベルでしか想像できない。山のいろいろな面を実感をもって知っているというのは価値のあることだ。いまは無雪期の沢登りで十二分に満足しているが、いつか真冬のこの厳粛な谷に入ってみたいな、と初めて思った。

 

上部ゴルジュ内のいくつかの悪めの滝を抜けたあとは、確保するほどではないがⅡ~Ⅲ級といった急斜面をえんえんとフリーで登った。定石通り右の沢形に詰めのルートをとり、最後の短い藪漕ぎであっという間に心が砕けちったあと、稜線に抜けた。先に抜けていたOさんと短く握手をして、「ノゾキ」まで歩いてようやく長い1本をとり、あとは予報通り降ってきた雨に打たれながら西黒尾根を下山した。

 

とても満足のいく山行だった。

 

一ノ倉沢出合い(6:30)~幻の大滝(7:50)~本谷バンド(9:40)~上部ゴルジュ(10:20)~稜線(14:20)~下山(17:30)

 

 

広大なスラブ帯。水は岩を濡らす程度。気持ちが上がってくる。

 

下部ゴルジュの入口。

 

ゴルジュの内部。特に難しい箇所はない。

 

ゴルジュの突き当りに幻の大滝がある。大滝といっても落差は15mほど。この日は水はしとしと垂れている程度だったが、全体的に濡れているところはぬめっていた。

 

左壁の右上バンドに取り付く。泥砂利を掘りながらの登攀で結構悪かった。

 

どんどん右上していって、落ち口をぬけて安定した小テラスまで40mほど伸ばした。

 

ビレイ。沢用に新しく買ったゆったりサイズのアナサジがすごいいい感じだった。

 

大滝の上のナメを抜け下部ゴルジュを見下ろした。

 

左には滝沢下部。これを無雪期に登るのはちょっと正気じゃない。

 

本谷バンドから4ルンゼ。最初に壁のように目の前に出てくる10mくらいの簡単な滝を超える。振り返ると本谷のすばらしい高度感が味わえた。

 

4ルンゼのゴルジュ。3か所ほど結構悪めの滝場があり全部ロープを出した。丹沢みたいに超ぬめっていた。

 

怖かった最初のCS滝のビレイ。

 

ゴルジュを抜けると簡単だが決して失敗できない急斜面の登攀が続く。各自フリーで適当に登った。

 

空が近くなり、終わりが近くなってきた。

 

下方はV字。右に少しだけ見える3スラ。

 

詰めは定石どおり右に逃げる形で稜線に出た。

 

「ノゾキ」からのぞいた。ノゾキと銘打った杭が刺さっているが、よりかかるとぐらつく!一瞬びびる。まかり間違えば杭とともに真っ逆さまだ。ちゃんと刺しておいてくれ~~。