隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

南アルプス深南部 大井川・明神谷

7/15 南アルプス深南部 大井川・明神谷

取水口から明神谷入渓(5:30)~魚無沢・アザミ沢2俣(10:00)~稜線(13:30)~大無間山(14:40)~小無間山(16:30)~北東尾根から林道(19:30)

with Sさん、Kさん

 

 

「関東周辺の沢」に書いてある謳い文句

下流から中流にかけてゴルジュ状の所が多く、中に無数の淵、トロ、小滝が連続し、惚れ惚れするような渓谷美である”

これはいつか行きたいと思っていたし、この翌週に深南部の別の沢を予定していたので、足慣らしにもなったらいいなぁと考えた。

2泊で入っている記録が散見されたが、2晩を沢でゆっくり過ごすのが目的でないなら、1泊で十分なルートだろう。しかし、今回は1泊もできない。日帰りしか時間が取れないのだった。

地形図をみて、はじめは本流から左岸支流の西魚岳沢に入って尾根を下降すれば、日帰りでもまぁ行けるかなと考えたのだが、これではどこか味気ない気がした。いかにもショートカット的な感じだし、同じ沢に再び訪れることは稀なので、肝腎の明神谷の本流をできるだけ長く歩きたい。

そのように考え出すと、2俣から本流の魚無沢を詰め上げて、大無間山・小無間山も縦走したくなってきた。ただ、1泊なら普通に問題ないと思われたが、日帰りで時間に追われながら“惚れ惚れするような渓谷美”を駆け抜けてしまうのは、それはそれでもったいない気もした。

しかし、地形図を見れば見るほど、日帰りだこれは、と考え至った。どちらにしても日帰りしか時間は取れないし、さらには何故か自分のなかで明神谷に行くことに既に決定してしまっていた。地形図に線を書いて、標高チェックして作り込んだりし、多分13~14時間前後で下山できると見込んだ。14時間だったら全然日帰りで行けるじゃん! だめだったら、西魚岳沢遡行に切り替えるなり、沢下降するなりすればよい。

たまたまSさんとKさんがどこかへ沢登りへ行くと聞いたので誘ってみると、こんな計画にご一緒してくれるという。うれしいかぎりだ。お二人とも体力も経験もすばらしいので、もう何の問題もないだろう。楽しい沢登りの予感でいっぱいになった。

そして、結果的に多少のハプニングもあったが、14時間ほどで山行を終えることができた・・。

予定どおり、技術的にむずかしいと思われるところはなかった。ひたすらやや速い目の進行で、あまり休まずに進んでいくのみだった。それでも深南部の風景を十分楽しむことができたし、体力的にもなんとかもった(いや、ヘロヘロだったか?!)。

なかなかよい山行だった。

 

深夜2時半に駐車スペースについて仮眠し、5時起床、明神谷左岸の林道終点の取水口から5時半ごろ入渓した。

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深山といった雰囲気のある渓谷。「関東周辺の沢」を見た期待感ほどではなかったが、同書が出版されてからウン十年。ときとともに人跡も増え、沢も変わっていったのだろう。

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これは細い水流の右の左上クラックあたりを登った気が・・。

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とっても美しい空間に落ちる滝だった。これはへつって右の棚に上がり、歩いて水流まで近づける。棚から水流右を6手ほどで落ち口。重ね打ちハーケンと浅打ちハーケンの残置が2か所。どちらもお助けにしか使えないだろう。特に抜けが結構悪くて、緊張した。

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ときに側壁が高くなるポイントがあった。

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日が十分上がってきて沢床も照らされるように。

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こちらはずいぶん濡れそうな気がしたので左から巻いた。

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巻きのルンゼ登りの図。この後斜面をトラバースし、せっかくなので懸垂で沢に戻った。

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 再び感じのよい空間。

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2俣を魚無沢へ。ゴーロとなり暑い! 沢登り的には終わった感が漂う。入渓点から2俣までは楽しく渓谷歩きができるが、ここからは1000mほどの正真正銘の詰め。ここをどれくらいの時間で抜けられるかがキーポイントかなと思っていた。

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右岸からの崩壊。

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ゴーロが終わると延々と荒れた様相となり、こまかくレストを取りながら粛々と進む。

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上流域ではさっさと枝尾根を拾ったほうが早いのだろうが、沢通しで無駄に頑張った。

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やがて沢形がなくなった。ただ最後の2俣を左のところ右に進んでしまったようで、狙ったラインではなかったようだった。

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樹林帯を少し上がり、稜線登山道へ抜けた。三方嶺にダイレクトに詰めるつもりだったが、大根沢山側に少しずれたところだった。

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登山道をたどり大無間山。もうヘロヘロであった。

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 一番誤算だったのは大無間から小無間までの時間。1時間もかからないだろうと思っていたが、休み時間も入れると2時間近くかかってしまった。お疲れモードということもあったが・・。

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小無間山からは入渓点に戻れるので北東尾根を下山にした。テープも短い間隔で巻かれており踏み跡も確か。読図と思っていたが、その必要はまったくない。

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日が傾きすこし霧が出てきた。苔むしたいかにも深南部といった様相。

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霧からいっとき光が差し込んだ。

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日が暮れてきた。粛々と歩いた。

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巨大な送電線に出た。ここらへんから明神橋へ進路を変えて向けて下山すればよかったのだが、なんとなく踏み跡になっている北東尾根どおしにさらに下りてしまい、道がよくわからなくなり、完全に日没を迎え、とりあえずは林道までどんどん下りることにした。

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林道はすぐ下に見えるが、10mほどの法面と土砂崩れ防止ネットに遮られ、降りられそうなポイントがない。さんざん探して、最終的にネットのわずかな隙間を見つけ、林道に懸垂下降して終わった。最後にこのようなハプニングもあり、楽しい山行になった。

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