マキヨセピーク2と呼ばれる顕著な岩峰を初登した。
パートナーは昨年「五郎山ダイレクト」をご一緒したA沼さん。数々の脆壁と戯れてきたレジェンドであり、私の100倍経験のある頼れる大先輩である。
ルートは100m弱くらいのスケールで4p出して登った。
なお、私の記録は駄文なので、ちゃんとした内容をご覧になりたい方はA沼さんの記録をご参照ください。
実はこのマキヨセP2は去年の11月末にロープソロで登ろうと思い立って行ったのだが、 日陰面に根雪が張り付いた登山道を歩き始めるときには、とてもそんなメンタル状態ではない自分を悟っていた・・。ちょっと前に不注意から(ギリギリ)グラウンドフォールをしてしまって、自信を喪失しトラウマになりそうな日々だったので、正直のところ、半分最初から分かっていたことなのだが。
それで初見で下から登るチャンスはなくなってしまうけど、未練がましくロープをフィックスして(フィックスなのに)めちゃくちゃビビりながら、2p目に登るであろう岩茸がバリバリの中央フェースを試登してみた。そしてピークのリスに決めたハーケンを悪戯に残置・・・、また来ようと思って。
それから半年経ち、年が明けていま5月。
1p。A沼さんとマキヨセP2の基部、左側のルンゼ状の壁の前に立つ。いつだって本チャンの1pは緊張するものだから、ここで自分が行かなきゃゴミカスだぜ?と思って行かせてもらった。
怖い。目を皿にしてプロテクションを決めて、危なくならないように登ったつもりだけど、結局けっこうな時間をかけてバンドまで辿り着いた。見上げると壁は部分的に薄被り。心が尽きてダイレクトなラインは諦めそこでピッチを切った。A沼さんと合流し、バンドをすぐそこの中央フェースにトラバース。
2pはA沼さん。私は中央フェースを感慨深く見上げながらビレイ。A沼さんはあっと言う間に見えなくなった。軽やかな足さばきとプロテクションスキルを見ていると、A沼さんが心底楽しんでるのがロープごしに伝わってきた。なんだか私も急に楽しくなってきた。緊張感やおそれよりも、クライミングの充実感が心に広がっていくのを感じる。そして楽しいフォロークライミングの時間。
3pは私。テラスから小さな岩稜をピークの基部までスタスタ移動。
4pもそのまま私。最後のピッチはもう楽しさしかない。ニコニコである。半年前にビビりまくってフィックスを作ったピークに登りつくと、あー終わってしまった、と思った。登ってくるA沼さんをパシャパシャ撮って、二人で自撮りして笑った。
怖かった? いや、楽しかった。
半年前に(ギリギリ)グラウンドフォールをしたのは、ここ五郎山の別のルートだった。幸い軽い怪我で済んだが、不注意だったしその時のパートナーに迷惑をかけてしまった。そして、失敗を払拭し自信を取り戻したいと思って単独で再訪し、自分に負荷をかけてみたが、一人では全然ダメだった・・、というわけ。
できれば人を頼らず自分のことは自分で・・などと考えているけど、現実にはなかなか難しい。
はじめ、登ることに過度に臆病になっている自分を自覚せずにはいられなかった。しかし、心強いパートナーであるA沼さんに心のどこかで依存することで、心がラクになっていき、結果的に楽しく登れた。パートナーと力をあわせて登るのだから普通のことなのかもしれないが、私にはそれがちょっとだけ悔しい。
マキヨセP2・・、緊張し、楽しくて・・、あと、ちょっとだけほろ苦い思い出になった。