隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

白神山地・暗門~赤石川~大川

 

10/22(1日目)

暗門川~西股沢

9時半ごろ駐車場を出発した。遊歩道を歩き出し暗門滝へ。昨日それなりの雨だったようで沢はいくらか増水していた。今日も曇りから雨になる予報だ。下流から第三、第二、第一と数える3つの滝はとても見ごたえがある。第二の滝で遊歩道が通行止めとなった。第三の滝を左岸から右岸に渡り、雨でグズグズになった急登を根っこを頼りに慎重に登ると、滝上の左俣にあたる西股沢に下り立った。

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第三の滝
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第二の滝
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第一の滝
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西股沢
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西股沢~C484二俣~C630コル

ここから「入渓」という感じだったのでハーネスを付けてヘルメットを被ったが、なんだか違う気がしてすぐヘルメットを脱いでしまった。沢は穏やかそのもので幾度か小滝がアクセントのように架かっていた。C484二俣からは中間尾根を登り出した。かつての杣道を辿る旅だ。モックリアゲと呼ばれる濃密な藪に覆われた台地で人跡は消え、幾度も行きつ戻りつしたが、いくつかあったピンクテープに助けられた。やがて小さな沢に下りて、最短ラインを少しはずしながらもC630コルへと詰め上がった。

西股沢の流れf:id:Kakuremino:20211102100003j:image
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C484二俣
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C630コル
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コルには看板が
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C630コル~ヤナダキ沢下降~赤石川

計画ではクマゲラの森のほうへ進むつもりだったが、杣道を拾う目がまったく冴えておらず、迷ってしまった。最終的に「沢登り」で普通に下降することに妥協し、地形を見ながら沢筋を下降しているとピンクテープが出てきて、これはヤナダキ沢を下降しているのだと分かった。薄い晴れ間が時々出ていた空は厚い雲に覆われるようになり、雨が降ってきた。ヤナダキ沢は赤石沢に合流する直前で大滝に下降を阻まれ、大きく左岸を巻いてから、やっと赤石川に下り立った。時間は16時を回っており、まずは適地を探した。ヤナダキ沢出合からすこし下流に下ると、すぐにすばらしい平らな川原を見出した。

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巡視路?らしきピンクテープに誘われてヤナダキ沢下降へ
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ヤナダキ沢
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滝に阻まれ、戻って右岸巻きで下降
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哺乳類観察のカメラが設置されていた
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ようやく赤石川が眼下にf:id:Kakuremino:20211101210340j:image

雄大な赤石川の流れ
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ヤナダキ沢のほぼ対岸の適地
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10/23(2日目)

赤石川(ヤナダキ沢出合~石滝)

夜半から雨がタープを叩く音が続き、朝方になっても止まらない。もっともっと冷えて、雪と紅葉の渓になるのを切望していたが、雨の一日になりそうだ。沢はさほど増水しておらずひと安心。一瞬止んだ隙に撤収し、昨日見れなかったヤナダキ沢大滝を見に行ってから、赤石川を歩き出した。雨は時にみぞれになったり、ひょうになったりした。ゆったりとした幅広な流れを幾度も渡渉し歩いた。沢床はとても滑っていた。そして歩き出して30分かそこらで、ついに渡渉でバランスを崩し転んでしまい、カメラを水没させてしまった・・。なんてことだ。心底がっかりするとともに、冷たい雨が追い打ちをかけるように強くなってきた。どうしても写真は撮りたい。iPhone12を出して2重にジップロックに入れ、素手になった。手はかじかんで少し辛いが、それでも悠久の赤石川を撮りながら歩ける喜びのほうが遥かに大きい、と自分を納得させた。

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ヤナダキ沢出合
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ヤナダキ沢大滝
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ヤナダキ沢出合から赤石川をみやる
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赤石川を歩く。そして渡渉に失敗しカメラ水没。この写真が愛用のRX100M3で撮った最後の写真になってしまった
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iPhone12で写真を撮ったが、カメラの補正が強すぎて、雨の中なのに晴天下のような写真になってしまう。こりゃダメだ。とりあえず白黒にしてみた
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あとはパートナーの写真を使わせてもらう
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腰下の渡渉。向こうに見えるのは石滝だ
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小さな落差の石滝を越える
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赤石川(石滝~ヨドメの滝)

石滝をすぎるとナメになり、また幅広の流れに戻った。そこだけ真っ赤に紅葉したもみじの下で雨をしのいで休憩し、また歩くとヨドメ(魚止め)の滝に着いた。瀑水といっても差し支えないくらいの迫力のある20mほどの滝だ。見るからに左壁が登れそうだが、雨の中滝登りをする気力もなく右岸を巻くことにした。巻きは容易で落ち口に歩いて下りれる・・、のだが、最初下降路がよく見出せず枝尾根を無駄に登ったりしてしまった。

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恥ずかしながらカメラ水没でちょっと落ち込んでしまっている自分
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上流になるにつれ紅葉の色づきが鮮やかになった(iPhone12)
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ヨドメの滝に着く
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ヨドメの滝(iPhone12)
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右岸巻き中に、ヨドメの滝上の小滝を見やる
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落ち口へ下降
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赤石川(ヨドメの滝~イシノコヤバ沢出合)

ヨドメの滝を過ぎるとまもなくイシノコヤバ沢を右岸に分ける。ここから赤石川を離れイシノコヤバ沢を遡るのだ。でも・・・、正直言って赤石川から離れがたい。まだ少ししか歩いてないではないか。指定ルートという縛りのため、源頭まで歩いていけないのを許容する代わりに、ここでもう少し過ごしていたい。時間は13時と早いが、パートナーに頼み込んでここで泊まることにした。天気が少しずつ良化してきたようで、時々キラキラとした晴れ間が出てくれた。そして、また雨になったり、晴れ間が出たり、を繰り返す空模様だった。

イシノコヤバ沢出合f:id:Kakuremino:20211101210922j:image

上流の流れ。源頭まで歩きたいが・・
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日差しで濡れたウエアを乾かすパートナー
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夜の帳が下りる
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10/24(3日目)

イシノコヤバ沢~C778コル

3日目は待ちに待った晴れる日だ。赤石川に別れを告げイシノコヤバ沢を登った。ありがたいことに、そして申し訳ないことに、私の窮状を見かねたパートナーがカメラを貸してくれた。C580二俣を右に入ると小滝が2つほど続いた後、水流はとても登れそうにない黒く急な岩肌を幾条かの滝となって流れていた。おそらくルートを外したのだろう。右岸のルンゼで滝をかわし、あとは枝尾根を拾ってC778コルまで登った。標高を上げると紅葉がいよいよマックスになり、柔らかな朝日もあいまって感動的な美しさだった。C778は今回の山行でもっとも標高が高く、よい区切りになった。

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苔むしたイシノコヤバ沢
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C580二俣
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ようやく訪れた晴天の朝
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右俣は黒い滝に阻まれる
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ルンゼで滝をかわし、あとは枝尾根を登る
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C778コル~オロの沢左岸支流~C420二俣

コルからは明瞭な沢筋を下った。容易にオリサキ沢へと下降できるものと想像していたが、それは誤りだった。地味に渋い小滝を3つほど巻き下ると、C580あたりで沢は水路状になりその下で先のよく見えない滝になっていた。ギリギリまで藪を巻き下って懸垂下降をと思ったが、下方がよく見渡せず30mロープ一本では不安が残った。結局滝上まで戻って、地形的にゆるい左岸側の尾根を拾って大きく大きく高巻くことにした。C450で沢に戻ると、空白区間を埋めるため、下りることができなかった滝まで沢を登り返した。C480あたりの二俣を右に入るとその滝に着いた。そこで2つのことが分かった。ひとつは、滝の落差は10mくらいで、懸垂でも問題なかったことだ。そしてもう一つは、どうやらC778コルから辿った沢筋はオロの沢の支流で、これを直接下るのではなく、右岸側の尾根を上手に乗っ越してオロの沢の本流に動いたほうがよかったらしい、ということだ。

紅葉マックスのコルf:id:Kakuremino:20211101211038j:image

小滝が続く
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地味に渋いクライムダウンが多い
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C450あたりで巻き下って沢に戻ったところ
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C480二俣。左がオロの沢本流、右が左岸支流。支流は渋い小滝が続く。上手にオロの沢本流に動いて下降するのがよかったようだ
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下りることができなかった滝を見やる
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C420二俣~オリサキ沢~C341二俣

C420二俣は滝で出合う。私たちが歩いてきた左俣がオロの沢、右俣がヤツの沢と言うようだ。ここからはオリサキ沢だ。一度だけゴルジュ状になり小滝を懸垂でかわした。あとは沢をふつうに歩き、C341二俣、大川出合にやっと着いた。

C420二俣を上から
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オリサキ沢で一度だけ懸垂下降で滝をかわす
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大川(C341二俣~タカヘグリ)

二俣にはかつてのマタギ小屋跡が平坦な適地になっていた。ここで泊まるのもすばらしいだろう。幅広く水を広げゆったりとした大川だが、20分も歩くとゴルジュの様相になった。水流が収束し落ち込んだ先は大きなプールを形成していた。そのような箇所が4つほどあり、いずれも両岸どちらかを容易にへつった。ふいに側壁がひときわ高くなり空が狭くなった。どうやらタカヘグリの核心部らしい。暗く、そして深い。

C341二俣の平坦地f:id:Kakuremino:20211101211041j:image

二俣を振り返る
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大川の流れ
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やがてゴルジュ地形になる
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タカヘグリ
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大川(タカヘグリ~C238堰堤~暗門)

タカヘグリは両岸ともへつるのは難しい。泳がなくてはいけないらしい・・。ザックの防水をいま一度完璧にし、泳ぎの得意なパートナーにロープを引いてもらった。私はなんとか泳ぎへつろうとしたが難しくて、半分ロープに引かれ、半分頑張ってへつって、で10mほど進むと水底に足が触れた。あとはピョンピョン歩きで通過した。全身ずぶ濡れなので最終日でよかった、とパートナーと言い合った。そこからの大川は粛々と歩くだけだ。濡れた体が冷えて寒かったが、気にしない。川原では靴の跡が散見され里が近くなったことを実感した。やがて堰堤に着き、大川から離れた。暗くなった林道から県道に出て、ヘッドライトで駐車場まで戻った。

タカヘグリ
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タカヘグリの出口を振り返る。左岸に滝が架かっている
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あとは川原を粛々と歩く
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思ったよりも小さなジョウトクの沢出合
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秋はつるべ落としだ
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堰堤に着き終わりにした
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自分の自然に対する情動なんて小さなものだ。そんなのは当たり前だ。赤石川の幾千年続いてきた歴史の一瞬に触れたに過ぎない。でも、そんな小さな情動を糧に生きているのも事実。そして、思ったよりも遥かに人の気配がなかったのがよかったな、と俗っぽく思ってしまうのも事実。源流の滔々とした流れは偉大で、自分のそんな卑小さもいっとき流し去ってくれるかに勘違いしてしまう。結局のところ、なにもかも自分次第なのだろう。

遠い遠い白神の渓だけど、またきっと来たいと決意してる。次は追良瀬川の白滝を見たいし、津梅川から白神岳にも登りたい。そんな沢旅をまたしよう。

 

 

10/22 アクアグリーンビレッジANMON(9:20)~C484二俣(13:00)~C630コル(14:25)~赤石川入渓(16:00)~ヤナダキ沢対岸適地(16:05) ※指定ルート23~22~18

10/23 BP(8:00)~ヤナダキ沢大滝(8:10)~石滝(10:00)~ヨドメの滝(12:00)~イシノコヤバ沢対岸適地(13:10) ※指定ルート18~19

10/24 BP(6:30)~C778コル(8:00)~C420二俣(12:20)~C341二俣(13:00)~タカヘグリ(14:20)~C238堰堤(16:10)~起点戻り(18:00) ※指定ルート25

装備:ダブル30m、ドライパンツ

参考:根深誠「ブナ原生林 白神山地をゆく」ほか多数、山釣り紀行HP、沢の扉HP

ルート☟

www.yamareco.com