行きは小糸川支流の三間川を三島湖から源流まで遡行。安房高山まで。帰りは小糸川の左俣源流から豊英湖まで下降。沢を15kmくらい歩けるプラン。
三島ダムにあるトイレ付駐車場を出発した。奥米隧道を抜け4㎞ほど歩き、廻田橋という車道と吊り橋と新旧の橋が並んだところから入渓した。写真は吊り橋の旧廻田橋。
入渓点付近から沢の風景。
すぐにえらく低い橋があり、その後ろはいきなり倒木である。橋を使って右岸から巻いた。
橋から5分くらいで二俣。本流の右俣へ進む。
黒い水面。そして・・、
また倒木・・。三間川は代謝がそれほどよくないらしい。下流でこれだと、上流は大変そうだ。
「開墾場の滝」までに2か所沢幅いっぱいの小滝を通過する。ところで今日は気温が低く水が冷たい。そこかしこ凍結していてチェーンスパイクなしでは無理。足がめちゃくちゃ冷たい。頑張る。
今日最初のナメ。
最大50mを越えそうな崖を越えると滝までわずかだ。
「開墾場の滝」。これ自体が川廻しの隧道なんだ。すごいなー。とりあえず休憩。水流右の残置ロープは腐り気味なので、なんとか自力で登ってみようと探ると・・、なんとハシゴが付けられていた。
「開墾場の滝」落ち口から隧道の奥を見やる。誰もが撮るアングルですね。
隧道を振り返っての一枚。こちらも誰もが撮るアングルですね。分かってても撮っちゃう。
隧道を抜けると右岸は崖、左岸は植林。しばらくナメ帯をぼんやり歩く。
林道の下を通る隧道。中はちょっと暗い。右岸には林道から階段が付けられており、お散歩コースになっているようだ。
隧道を抜けるとかつての遊歩道が整備されていた。沢は文字通りのV字。なかなか楽しいお散歩区間だ。
と、堰堤が出てきて三つも続く。荒れるときは荒れる、ということか。堰堤の上はお決まりの土砂の堆積だ。
ところで道中、猪がほじくり返した跡が何か所もあった。猪の気配が他よりも濃ゆい。あと、トンビが数羽ピーヒョロピーヒョロ騒いで逃げて行ったので、あーひょっとしたら、と思っていたら、食い散らかされた鹿の死骸が急に足元に出てきて、ぎゃーと叫んでしまった。
9時半をまわり、朝日が沢床まで照らしてくれるようになった。霜が降りた泥地はクラストした雪面のように固くなっていて、足が滑りもせず潜りもせず快適に歩けた。日差しが強くなるとともにぬかるんでいくのだろう。
地形図で右岸の林道記号の切れ目くらいのところにはピンクテープが付けられていた。林道に上がってみたところ、さらに奥まで続いていた。沢は倒木でよく埋まるので少し林道を歩くことにしたが、
すぐに眼下に隧道が出てきて沢に下りた。えらく背が低い隧道で、一回天井にぶつかったら砂が降ってきた。
また隧道。
隧道を抜けると遊歩道。そして三間川最大の堰堤。
沢床が倒木で埋まった白い壁(地形図の北側のC301峰の東)を通り過ぎると、
いままで以上に倒木で沢が埋まるようになった。はっきり言ってうんざりしてくる。それでもなんとか巻いて、ジャンプで沢に下りたら・・、
ズボッ!と膝まで泥土に潜ってしまった! 土壌が緩くなって泥の沼地みたいになっているらしい。またぎゃーと叫んで、慌てふためいて抜け出した。注意しないとね自分。
そしてこれを見て沢通しは、もう断念・・。
C220あたりまでなんとか進んで、左岸の尾根を拾って林道に抜けることにした。そしたら尾根では・・、げ、真っ黒なでかい猪が! どどどど、と重低音を立てて向こうへ逃げて行った。た、助かった。林道では・・、鹿が逃げて行っていつまでもピーピー警戒してる。ふん、まあいいでしょう。あとは安房高山の山頂まで。
安房高山。林道からは登山口まで無駄に歩かされるので、コンクリの法面を適当に登って山頂に抜けてしまった。やっとお昼ご飯を食べる。賞味期限切れのアルファ米の田舎ご飯にふりかけかけて、ね・・。わびしいお昼。
下降は山頂から西尾根を、小糸川C220二俣に下りた。両俣とも沢は埋まっていて、すぐに堰堤になる。5分歩くとまた堰堤。水はちょろちょろ。粛々と歩く。
そしてこれは、国道410号に林道が接続する手前の、90度カーブの下を通る隧道だ。ここまでも小糸川源流左俣は引くくらいゴミが多めではあったが、この隧道は数々の産廃でさながらゴミ捨て場のような様相を呈していた。これには衝撃を受けた。
隧道を抜けると同様にゴミだらけだ。正直のところ、一気に心が折れそうになった。こんなふうにゴミだらけにされてしまった沢を歩くなんて、イライラしてくる。「ウォーターウォーキング」で紹介されている区間まで国道を歩こうか・・、悩む。でも国道に逃げたらきっと後悔するだろう。ゴミは国道から捨てられているからだ。逃げずにかたくなに沢通しで頑張ってみよう。10分休憩して出発した。(なお、ゴミが写った光景はこの隧道以外はいっさい載せません。)
蛇行部分のどれかで上部が大ハングした白い壁。
側道をくぐる隧道。これは長いし、途中でカーブしているから、中は真っ暗。まったく入る気がせず、巻いちゃった・・。
上の隧道を過ぎると、C175~170あたりで堰のようなところがあった。ここからゴミが減った。
また房総らしい渓相になった沢を歩き、ほそい隧道をくぐった。その後、胸まで浸かりそうな淵。これの向こうにC153二俣があるはずだが。うーむ。無理。二俣まで巻くことにする。
左岸斜面の木をなんとか登って巻いた。二俣への下降はさらに難しく、木と根っこでクライムダウンしてからジャンプ。最短で巻けた。今日の核心だった。二俣から上流はすぐに左右両方ともに堰堤になっている。
やっと求めていた房総の沢に戻った。左岸の遊歩道を穏やかな気持ちで歩き下る。
遊歩道を歩いていたら、さっきより全然深そうな淵が。遊歩道は・・、左岸を巻いているらしい。なかなかエクストリームだなぁ。遊歩道は途中で朽ちており、残置ロープで簡単に下りれたが、残置がなかったら大変だろう。
あとは14時半を過ぎまた気温が下がってきた沢を歩くのみ。
ホテルシルクヴィラのほうへ上がっていく木道のところで終わりにした。
See You・・。デポしていたキックボードで駐車場まで戻った。
正直に感想を述べてみよう。沢山歩けたのに充実感がない。自分がこの里山の自然と上手に向き合うことができなかったのだと思う。30km近く動きまわって、200枚以上写真も撮ったのに、印象に残っているのはゴミだらけの小糸川源流左俣の様相だけなんだ。ではそれを避けてキレイな区間だけ歩けたらよかったのだろうか。・・そうは思わない。一期一会の小さな出会いだから、自分の選択したラインを、できる限り全部歩きたいと思っている。出会いはそれ自体がかけがいのないものだ。国道の下を流れる”小糸川源流左俣”は所詮は地形図だけ見て決めたラインだったが、出会いであることに変わりない。正直いって忘れることも簡単にできるが、そうはせずに意識的に時々思い出してみよう。そうだね。それがよい。まだ終わりにしないほうがよい。また紅葉の時期にでも来てみようか。でももし来るなら右俣がいいね。
三島ダム駐車場(7:00)~三間川入渓(7:40)~開墾場の滝(8:25)~C220脱渓点(11:00)~安房高山(11:45-12:00)~小糸川C220二俣(12:25)~C153二俣(14:20)~C120脱渓点(15:35-15:50)~起点戻り(16:35)
装備:チェーンスパイク
参考:WWウォーターウォーキング2、白山書房、2013
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