いまの時期、日照時間は6時半ごろ~17時半ごろの約10時間です。長い距離を歩きたいと思ってはいますが、房総とはいえその10時間以内で山行をおさめようとするなら、私には30kmくらいまでの行程がせいぜいです。沢と沢以外の割合にもよりますが、それなりに疲れますしね。
こんな計画にしました。以前予定したけど行けなかった高宕川遡行~志組川下降。それに湊川本流と高宕川下流域をつなげて周回してみよう。志組川の出合から湊川本流を歩き下り、高宕川を出合から源流まで、そのまま尾根を乗越して志組川を出合まで下降。これで沢だけで25~30km。
・・・、途中で紆余曲折あり、ショートカットして下山してしまったのですが。
・湊川本流下降
5時45分に高宕山自然動物園の無料駐車場についたがまだ真っ暗・・。空が白むのを待って6時半ごろに出発。出合の隧道を抜けると湊川本流。ここは東北と言われればそんな感じがしてくる幅広な流れを、スタスタ歩き下る。さっそく鹿が逃げて行った。1本目の国道の橋の手前で滝があった。2本目の橋の手前で側壁が高くなり水流が集束していた。先週その橋の上から見てみた限り巻きになるかも、と思っていたが、ジャンプ渡渉と膝までの入水でクリアできた。「関の犬岩」という景勝地(?)を通過した。ここは秘境と言われているそうだが、まぁ水量がもう少し多い時期に来ればもう少し秘境な感じがあるのかもしれない。特に苦労なく歩いてきたが、その後、一か所だけふとももまで入水してへつる箇所があって、しばらく震えた。朝方で曇天だったのでひどく寒くて手足がかじかんだ。寒い寒いと思って歩いていると、高宕川出合に着いた。志組川出合から2時間だった。
湊川本流はもっと人里の色濃い川だと思っていたが、実際にはそうでもなかった。鹿が寝泊まりした形跡が散見され、土の部分はイノシシにほじくり返されまくっていた。また。いろいろな足跡が横溢していた。一方で支流(?)は排水口といった感じで入ってきているし、水が滞留している箇所もあり、ところどころ臭かった。しかし、アユが遡上するらしいので水質はそれなりによいのだろう。水の少ない冬だから困難はないが、水量が多ければどこまでも流されかねないまさに川だ。
・高宕川遡行
出合は護岸されていて砂浜みたいになっていた。川幅が一気に狭くなり岸があまりない。そのため膝くらいまでの水中歩行が多くて体が冷え切った。最初の橋の手前で沢は屈曲する。そこは倒木で堰き止め状態になっており、滞留した水が真っ黒でブクブク泡立っており絶対に足を入れたくない感じ。遡行していけば沢床はいずれナメになるのだろうが、ここは上流から押し流されてきたゴーロ、泥土、砂が連続し、それらの間に流れの弱い小規模な淵が形成されている様相だ。あと、結構臭い。ふつう沢登りの対象にはなりえない里沢だが、我慢して進もう。
ひときわ深そうな淵が出てきた。なんとかへつりか徒渉ができそうなラインを見出そうと、股まで浸かって水底の状況を伺った。と、透明度の低い、暗い濃緑の水中に、黒くてバカでかい魚影がゆらりと3つ現れた。ありゃ・・鯉だった。彼らは人間を気にするそぶりを全く見せず、俺の足元をあくまでゆったり泳いでいた。その光景を3秒くらい見下ろしていたら、突如として俺は「素」に戻ってしまった。自分は一体いま何やってんだ? これの何が楽しいんだ? しまいには自分が、鯉の棲む淵で股を濡らして自涜感に浸っている腐った変態に思えてきた。俺は変態か? ちょっと無理だ。我慢できない。
困難など何もない房総の里沢といえど、自分の世界に没入してやり切る必要があることを思い知った。素に戻ってしまったら、こんな山行に価値を見出すのは難しい。心は帰宅に一直線だったが、思い止まって、ふつうの沢登り・・つまりガイドブックどおりの沢登りくらいは最低限やって帰ることに。目的を忘れんなよ。もっと歩かなきゃ・・。
すごすごと橋まで戻って道路に上がり、川沿いを歩いた。また道路が沢に下りていくところがあったので、そこから再入渓した。ナメが出ていてさっきと比べたら随分キレイな景観になった。途中で白鳥が1羽いた。沢通しで進むと白鳥を追い立てるみたいな感じになってしまうので、林道に上がって白鳥を大きく巻いて(?)、川廻し隧道で再々入渓・・。そこらへんからは高宕川沢登りの通常のルートに入ったようだ。
黒滝、急駟滝と過ぎると、沢はゴーロと泥土で埋まっている箇所が多く、倒木も多い。はっきり言って心底うんざりしてくる。何度目かの倒木と堰き止めの泥土を越えた後、稜線まで沢筋を忠実に詰め上げるのは諦めて、志組川との群界尾根へ向けて枝尾根を登った。5分で群界尾根につき、精魂尽き果て、がっくりとうなだれ休憩した・・・。
・志組川下降
群界尾根は登山道になっていて、数分で林道の末端に至った。末端から適当に志組川に下りると、結構キレイじゃん。高宕川より随分とキレイなナメが続いていて、ちょっとホッとした。コンクリの一本道が沢床に遊歩道のように伸びていた。どうやらコンクリの内部はチューブみたいなのが通っているらしく、温泉でも引こうとしていたのだろうか。妄想で現実を忘れようとしながら歩く。
二つほど小規模なナメ滝を通過すると、左岸に落差のある滝と白い崖が見え、まもなく橋が見えてきた。沢は大きく蛇行し、もう一度橋をくぐる・・。自然に足が止まり、このまま頑張って沢を歩き下るのか、橋に上がって林道を歩き下るのか、頭にこの2択が浮かんできた。実際には1択だった。もう飽きた。飽き飽きだ。橋の下のルンゼを強引に登って林道に上がり、チェーンスパイクを外した。もう一度がっくりと休憩し、駐車場までiPodで音楽を聴きながらとぼとぼ歩いた。
山行中に素に戻って自分に引く、という経験は初めてで少々面喰いました。せっかくの秘境・高宕川でしたがまったく楽しめず、またここまで読んで下さった方には本記録が完全なる駄文となっていることをお詫び申し上げます。
長い距離を歩くことをテーマに房総の沢歩きを3年ほど前からしてきましたが、今後は楽しむことがあまりできそうにない気がします。いったんここで一区切りとし、他に目を向けたいと思っています。
実は房総では目標があり、それは夕木川を弘文洞跡から源流まで歩きとおし、そのまま養老川本流を可能な限り下流まで歩き戻る、というものでした。全部で40km以上あり、日照時間の兼ね合いから4月ごろに実行しようと思っていたのですが、どうやら当面行くことはなさそうです。(計画をここに書いている時点で、もう行く気がないということです。)
どなたかこの駄文ブログを気に入ってくださってる方がいれば、代わりにどうぞ。きっと楽しいですよ。
高宕山自然動物園駐車場(6:25)~高宕川出合(8:30)~急駟滝(10:30)~C210尾根(12:10)~志組川(12:25)~起点戻り(13:55)
装備:チェーンスパイク
ルート☟