夜中の3時前に西沢渓谷に入り、徹夜で歩き出した。そのおかげで雁坂峠につくと、両神のほうから上がる朝日を見ることができた。不安定な大気に広がる赤い暁光はとてもドラマチックな雰囲気。山で朝日を拝むのは実に久しぶりであった。
22日は霧のち曇りときどき晴れで、気温がやけに高かった。雁坂峠から甲武信までのルートはマイナーなようで、人もおらずトレースもほとんどなかった。静かだった。積雪は深くて40cmかそこらだが、一歩一歩が湿雪のツボ足で疲れた。そして徹夜がたたり、雁坂嶺から破風山あたりでは猛烈に眠かった。
途中の破風山避難小屋でがっくり休憩して、13時ごろやっと甲武信小屋についた。10時間もかかった。甲武信あたりの登山道はよく踏まれており、いままで人けのあまりない尾根を歩いてきた身としては、一気に興ざめしてしまった。テン場は大人数のパーティがすでに張っていたので、登山道を戻って平らなとこを見つけ幕にした。
夜はきれいな満月で深夜でも明るかった。
さて、ちょっとしたハイキング気分で入ったので、道中の足元はなんと普通のローカットのアプローチシューズと普通の登山ズボンで、スパッツもなし。雁坂峠からしばらくして脛の下までずぶ濡れとなり、6時間もずぶ濡れで歩いた。しかし心配ない。靴はもちろん替えを持ってきているし、靴下もウールの替えが2枚、それに加えネオプレンソックスもある。テントでは、とりあえず濡れた足を、やっとこさカイロと象足と湯たんぽであっためた。なお、替えの靴はトレランシューズである。
ナメ切ったスタイルで来てみた。やっぱりあまり快適ではなかったな。
本来の計画では22日に国師ヶ岳まで歩くつもりだったが、甲武信につく時間が遅れ、断念した。足もずぶ濡れだし、徹夜で眠い。もはや甲武信の山頂も割愛した。それで、14時ごろにテントに入り寝て、起きてアマゾンプライムでデンゼルワシントンの映画を見て、ご飯を食べて、また寝た。お酒は持っていなかった。
ジェットボイルでスープカレーご飯を食べて、そのあと麦茶を沸かして飲んだら、カレー麦茶となり不思議に美味しかった。が、下山後ペットボトルに入れておいたそれをまた飲んだら、激マズで吐き捨てた。
23日は徳ちゃん新道を西沢渓谷に下山するだけなので、適当に起きて出発した。天気は昨日より気温は低め。終始濃霧で、標高を下げると雨になった。ネオプレンソックス+トレランシューズはなかなかいい感じであった。
冬枯れした西沢渓谷の遊歩道は寒々しく、一人で歩くにはもってこいである。充足した気分で道の駅に停めた車まで戻った。
計画では、初日は西沢渓谷から雁坂峠、甲武信岳をへて国師ヶ岳あたりまで、2日目はゴトメキ、大ダオ、黒金から西沢渓谷に下山という、西沢渓谷の周りを一周するみたいなものだった。が、体力的にもぜんぜん無理であった。足のケガが治って、ようやく山歩きを再開した身なので仕方ない。
しかしながら基本、人けのない山に行きたいので、これはこれで個人的にはとてもよかった。冬枯れした奥秩父の、「沢」と「藪」と「雪の稜線」をつなぐハイキング以上沢登り未満といった小さな旅は、楽しいかも、と思った。
スタートしてすぐの雁坂トンネルを見下ろした。
暗闇の登山道。
空がわずかに白み稜線が確認できた。
雁坂峠でちょうど日の出を迎えることができた。
ご来光。
雁坂嶺へ向かう稜線登山道。
眼下の西沢渓谷をはさみ黒金山方面。ぐるっと一周したかったが。
一瞬日が差す瞬間もあったが曇り。
破風山への最後の登り。
西破風山。
破風山と甲武信との鞍部にある避難小屋。とても快適。
甲武信への最後の登り。
ぐっしょり濡れた足。これで何かあったら批判されても仕方ない。
踏み散らかした自分のトレース。
甲武信小屋。あるいはここでも一人きりではないかと期待したのだが。
快適なテント。右下には明日履くトレランシューズ。
夜は満月。
翌朝は寒々とした霧。気温はそれほど低くはなかったが。
以前、釜ノ沢の下山で、ここで景色を眺めたなぁ。
徳ちゃん新道への分岐までの下り。だんだん雪が減っていく。
濃霧とカラマツ。
冬枯れした寂しい西沢渓谷。落ち着く。
おわり。