アブミ登攀の経験がないというJunさんの練習に付き合い、三つ峠。天気予報が大外れで、終始曇り空で時折パラついた。けっ。
いや何を隠そう私も練習で人工ルートを登りに来たことはなく、これが初(笑)。思えば、アブミは滝とかでネイリングで使うために念のため持っていくくらいでほぼ出番がない。あとはセルフレスキューやロープ登りのときのフットループ替わりか。
階段状の岩場で手順を説明し何回かやってもらって、「逆V字ハング」らしきルートの1pをリードフォローで2回登って練習した。Junさんは1回目は出だしのハングで手詰まってどパンプしたらしく、休憩をはさんで1時間近くかけて登ってきたが、2回目は15~20分くらい。思ったとおり、やはり得意だろ。私は2回目、歩荷を兼ねて無駄に背負ってきた全荷で登ったが・・、いやー辛かった!
ダラダラしてから、せっかくなのでマルチで登りませんか、となって巨人ルートからセストグラディストを目指した。が、登り出しが15時前、当然ながら、3p登った後に到着するセストグラディストの取り付き付近で16時を回った。そこまでで、半ば計画通り(?)の下降。まあでも、普段の沢では獣道を拾うのが主体で懸垂下降をほとんどしないので、2pの下降もできてよかったでしょう。
その後、ロープ登りの練習を軽くやって18時半ごろやっと終わりにした。
日没を過ぎ、曇り空の西面登山道の樹林帯にはすぐに夜の帳が下りてきた。そして雲のなかにいるような霧に覆われている。目を上げると樹木の黒と霧の白、目を下げると土の黒と石ころの白。それらが入り交ざっているモノクロな風景に、笹原の薄く暗い緑がよく映える。微妙に残った残光が霧に反射して拡散しているのか、不思議な幻想的さにあふれた薄い闇。
ヘッドライトはつけない。電池節約という現実的目的もあるが、それよりヘッドライトをつけると視界が狭くなるのがやだ。少ない情報を得ようと瞳孔を開き神経も研ぎ澄まされていると思っているが、ヘッドライトをつけるとその瞬間、瞳孔は閉じ眼前の1点しか見えなくなる。それ以外は完全に真っ暗だ。
薄い闇のなか、黒い登山道に小さなコントラストを作り出している葉っぱや根っこ、段差。なにより白く光って見える石を手掛かりにして歩く。
あー、自然のなかにいるなぁー。と手前勝手な情念にひたる・・・。
駐車場につき空を見上げるといつの間にか霧はなくなっていて、意外に濃紺の青空になっていることに気が付く。
そして車のキーを開けるピーという音とともに車内灯がつき、それを見た瞬間、あたりは真っ暗になった。
おわり。