隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

奥秩父・鶏冠谷左俣

 

鶏冠谷出合。水面は微妙に凍っていたが、さっそく踏み抜いた。

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10m魚止ノ滝は右巻き。5mmのダイビング用ネオプレンソックスに1サイズ大きい沢靴を履きチェーンスパイク・・、ではまともなクライミングはできそうにない。

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ゴーロからナメに。両岸が立ってくる。積雪や凍結した箇所が目立ち始めてくる。

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3段12mナメ滝。ヌメヌメで地味に苦労した。一回ムーンウォークで滑落した。

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逆さくの字滝。これもえらくヌメっていた。

 

その後は雪と氷で進みにくくなる。ゆるい積雪に覆われて沢床の形状が分からないので若干危ない。というのも、雪面は貧弱であり、かなりの確率で沢床まで踏み抜くのである。太ももまで踏み抜いたり、斜めの岩でバランスを崩したり、たまたまでかい岩の上だったり・・・。それゆえ恐る恐る確かめながら歩くわけ。ちょっとした小滝や転石も同様で、岩に張り付いた雪も氷も支持力に乏しく、手掛かりには使えない。小滝を登るとしたら、それらを強引に壊して岩面を出して登るか、あるいは雪面に飛びついて四つん這いでフリクションを稼いで登るか(?)。どちらも非効率的かつ無駄にリスキーである。それゆえちょっとした所も両岸斜面の雪面をツボ足+アックスで巻くことが多くなり、えらく時間がかかった。

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奥飯盛沢の一本奥の右岸支流が大きく凍っていた。

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その支流全図。1月とかならもうちょっと立派になるのかも。


今日は気温も高いし、下はドライウェアなので、腰くらいまでの水位なら沢通しで進むつもりだったが、淵の先のヌメヌメ小滝がちゃんと登れるか心配なので、結局巻き巻きになった。下の写真でいえば、左岸の雪面は一見使えそうに見えなくもないけど、乗ると全部落ちる。小滝はヌメヌメだし、淵にドボンは絶対避けたいので・・。

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ここは沢通しに進んだ、っけ?

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二俣手前の淵はかなり危うそうで右岸高巻き。結構高巻いた。

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二俣直下の「滑りやすいナメ滝」に、すると思ってなかった懸垂下降で下りた。

 

二俣。疲れ切って大休止。

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残念なことに進行が予想以上に遅い。出合から二俣まで2時間以上かかった。用事があって前夜発できなかったのが悔やまれるが、そんなこと言っても仕方がない。短い行程の左俣なので、うまく行けば所要3時間で、13~14時くらいに稜線に上がれるかと楽観的に計画を練り直して出発したが・・、高度を上げれば上げるほどさらに時間がかかることを、ここ二俣ではうまく想定できていなかった。沢はますますゆるゆるの雪と氷でトラップだらけになっていったのだった。下の写真は12m滝。

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12m滝は水流すぐ左を登った。スメア的な足置きがちょっと怖い。

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遡行図でいう10m滝? 氷を避けて右岸から上がって、立木で落ち口にトラバース。

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10mスライダー状滝。右壁をプッシュ。足はスメア的足置きなので相当マジになって登った。


10mスライダー状滝を抜けると一ノ沢の大きな白いナメが見えてきた。本流のほうも奥に遠望できる3段15mは全体が雪に覆われていた。沢床を踏み抜きながらあそこまで行く気にはならないので、そのまま左岸斜面を無理やり登って巻いた。

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奥に3段15m。手前左は一ノ沢。1月とかに来たらもっとキレイなのだろう。

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巻き途中に一ノ沢の大きなナメを見やる。一ノ沢改めて来たいかも。

 

その後、薄く雪が張ったナメを挟んですぐ右岸に二ノ沢。さらに三ノ沢までもすぐだった。

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二ノ沢。

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三ノ沢。

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お疲れモードでまた休憩し、登ってきた道のりを振り返ってみる。

 

三ノ沢を過ぎると幅広なナメとゴーロが連続するようになった。ナメはそれほど踏み抜かないので、ゴーロより大分マシである。ただ、すごいヌメる。

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そして、C1830あたりでトイ状の連瀑帯に。ぱっと見で奥のゴルジュが氷に覆われているのが分かった。正直のところアイスクライミング的なことをするつもりは全くなかったが、少しその真似事をしないといけないらしい。それ以前に、ゴルジュ内手前の小滝を登って奥まで辿り着けるかどうか、それすらも分からないが。取り急ぎ、チェーンスパイクからクランポンに履き替えた。とはいえ靴はやわらかい沢靴なので前爪で乗ったりなどはできないのだが。

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うーむ。巻くのはかなり大変そうなので、もし巻くのであれば、ここからびっしり積雪している右岸の急斜面をなんとか登って枝尾根に逃げて、そのまま鶏冠尾根に抜けるしかなさそうだ。ちょっとヤバそう。それと比べれば、ゴルジュを進んだほうがローリスクに見えた。ゴルジュを上手に抜けた所で再検討、と決めて進むことにした。

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雪面はなだらかだが、思い切り踏み抜いて腰上まで埋まった! 2mくらいの段差が雪で隠れていたらしい。小滝やトイ状も隠れているようだ。正面突破は不確定な要素が多いので止めだ。左岸の氷を6手ほどのダブルアックスでなんとか登ると、そこからトラバースしてゴルジュを巻けそうだ。雪解け直後らしくドロドロになったガレを慎重に巻き登り、沢床に戻ろうとしたが・・。

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C1870でゴルジュを抜けると雪に完全に埋まってしまった。吹き溜まりの沢床をラッセルするのはちょっとありえない。いや、ちょっとやってみたが、全然無理。ここから尾根に逃げることにするが、右岸は北向きで積雪が多い。ちょっと距離が長くなるが左岸にしましょう。左岸も積雪はあるが右岸より大分マシそうだ。あと高度300mほどで稜線なのだが、そう、ここからが辛かった・・・。

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詰め登りは、ゆるゆる雪のラッセルと頑固なシャクナゲの藪漕ぎという二重苦をこなす。見栄も外聞もなく、スマホGPSで最短距離をはじき出しつつ獣道をつないでヘロヘロになって登った。振り返ったら鶏冠尾根が近くに見えた。やっと終わりだ、と思った所から、さらにシャクナゲが猛烈になった。



鶏冠尾根に出た。二俣から4時間半かかったため、もう15時だ。時間の目標をさらに下方修正し、日没の17時45分までに第三岩峰の核心部分を通過していること、とした。これ以上は遅らせることはできない。そして核心の岩場を懸垂下降したのは17時20分だった・・。鶏冠尾根にトレースがなければ100%無理だった。

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鶏冠山山頂。素通り・・。

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第三岩峰も素通りし、鶏冠尾根で最も印象的なピークである第二岩峰でようやく休憩。暮れなずむ西沢渓谷をしばらく眺めた。あー、やってしまった、こんなところで、独りで夜だー、と思った。

 

鶏冠尾根に別れを告げ、

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粛々とピンクテープをヘッドライトで追いかけて下山し、駐車場に着いたは20時・・。遅くなってしまった。でも、ヘッドライトで歩きながら今日一日を振り返って、いろいろなことがよく分かった気になった。そう、こんな半端な時期に普通に沢登りをするのはなかなか難しいことだが、全然やれそうな気がしてきた。いや勘違いかね。

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西沢渓谷駐車場(7:20)~鶏冠谷出合(7:45-8:10)~逆くの字滝(9:20)~二俣(10:15-40)~15m滝(11:15)~三ノ沢出合(11:45)~C1830付近トイ状連瀑帯(13:10)~C2177付近稜線(15:00)~鶏冠山(16:30)~鶏冠谷出合(19:30)~起点戻り(20:00)

装備:補助ロープ30m、ハーケン3、アックス2、クランポン、チェーンスパイク、沢靴

参考:東京起点沢登りルート120、100

ルート☟