隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

奥秩父 ヌク沢左俣右沢~西破風山~ナメラ沢

行程:道の駅みとみ~近丸新道~渡渉点からヌク沢入渓~左俣~右沢~大滝のぼり~左岸側を詰めて破風山避難小屋~西破風山~ナメラ沢中間尾根下降~二俣からナメラ沢下降~久渡沢下降~林道~道の駅みとみに戻り

 

日の出前の薄暗い西沢渓谷はしんしんと冷え込んでいた。ブルブルでお着換え。あ!替えの登山靴を忘れた。びしょびしょの沢靴一足で全部歩かないといけない。まー今日はぴかぴかに晴れる天気予報だからよいでしょう。チェーンスパイク、そしてネオプレンソックス、グローブ(といっても軍手とテムレス)の予備を確認して歩き出した。ヌク沢下流部は時間が早いと薄暗くて渓相がイマイチだった覚えがあり、近丸新道を登って渡渉点から入渓することにした。軌道は1か所ルンゼの崩落でレールが宙を舞っていた。f:id:Kakuremino:20200314112003j:image

近丸新道から小滝が見えた。f:id:Kakuremino:20200314111508j:image

大きな堰堤で仕切られた渡渉点でお仕度、といってもヘルメットを被るだけだが。堰堤を左岸から意外なほど大高巻きでクリアして入渓した。
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沢幅が広く、多少の解放感があるゴーロ歩き。が、まだ日差しの届かない沢床は寒々しており、水に入れている足がとても冷たい。軽く耐え難い。足を水に入れるのは渡渉だけにしておく。
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渡渉点から二俣までは堰堤区間。これは庭園的雰囲気。
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堰堤上はお決まりの広河原。
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水溜まりが凍っていた。しばし投げ石で氷を壊す大会を開く。
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ふと足元を見やるとギョッとした。なんと沢靴の足首から上とドライパンツの下がバリバリに凍っている!ちょっと引いた。陽が上がるまで巻き巻きで歩くことにした。意外な発見があって、2つ目の堰堤上から右岸を50mほど登るといい感じに台地っぽくなっており、かなりしっかりした踏み跡になっていた。f:id:Kakuremino:20200314154131j:plain

二俣で左俣の左岸に渡った。右を見上げると林道の橋が見えた。左岸の斜面を巻き進んで、小滝を眼下に見下ろすところで沢床に戻った。
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水流のない濡れた面ではそこかしこに凍結が見られ、慎重に歩く必要があったが、それ以上に今日の足元は初めて履くモンベルのサワークライマーなので、ファイブテンのステルスラバーと比べて大きな不安があり、おっかなびっくり。足首から下が冷たくてじんじんした。
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奥ノ二俣で大休止にした。とりあえず3mmネオプレンソックスの上に0.5mmを重ね履きした。日差しが届いている右岸側の斜面を登って、陽だまりでぼんやりタイムに突入した。f:id:Kakuremino:20200314111903j:image

解凍中。だんだんと快適気分になってくるが、40分も休憩しちゃった。
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チェーンスパイクを履いて再開。右沢の連瀑帯に入ると岩肌はベルグラが張り、小さなつららやシャーベットが沢山見られた。基本巻きでどんどん進んだ。チェーンスパイクは偉大だなぁ。
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釜がおもしろく半凍結。
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大滝の手前の10mはシャバシャバ。左の岩をつないで登った。
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遡行図で100mと書いてある大滝下段、というか水流のある段々状を登り切るところで空が広くなり、やっと大滝とご対面になるなぁと気分が高揚した。
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大滝(大滝中段)。遡行図には80mと書いてある。私としては大滝はこれだけで、上段と下段は別扱いが適当な気がするけどなぁ。
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より簡単そうな右側から傾斜が緩くホールドが多そうなところを登っていった。日差しで砕けたベルグラが何回も降ってきた。
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残置ボルトがあった。
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中ほどで真ん中あたりに移った。
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気温も高くなり、快適である。たわむれに岩に張ったベルグラをつかみ、チェーンスパイクでスメアリングしてみる。
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落ち口からは右俣の橋が彼方に遠望できた。
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大滝上段は左側を適当に登った。50mもあるかなぁ。
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上段の落ち口はベルグラとつららで着飾っていた。とても綺麗だった。
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滝上の風景。沢登り的には終わった感が漂う。少しだけ歩き、1970m付近で沢を離れ、左岸の樹林帯に入った。
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いつしか沢音が消え、自分自身の音だけ・・、沢靴で踏む一歩一歩、その都度にこすれるドライパンツの膝、そして何より登りでハァハァと荒くなった息遣い・・・。樹林帯を抜けると、目の前にはこの山行で一番楽しみにしていた、美しくもどこか物哀しいシラビソの縞枯れ。足が止まった。その瞬間、あたりは凜とした静寂に包まれた。思わず僕は息を整え、神妙な面持ちで前かがみの姿勢を正した。静謐とは正にこれだった。ここにずっと居たいと思った。しかし、やがて空から飛行機の音が聞こえてきて、また歩き出した。f:id:Kakuremino:20200314111859j:image

少し登りすぎ、トラバース気味に破風山避難小屋へ至った。奥に西破風山が見える。
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そこからが実に長かった・・。ゾンビのように一歩一歩フラフラ歩み、空が近くなってからがまた遠かった・・・。
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山頂。また40分もぼんやりタイムを過ごしてしまった。計画としては東西破風山稜線の真ん中くらいからナメラ沢二俣に伸びる中間尾根か、山頂から伸びる青笹尾根か、どちらかをトレースするつもりだった。時間的にも問題ないし、できれば二俣からナメラ沢に入りたかったので前者にした。

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稜線には積雪。ちょくちょく踏み抜く。
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中間尾根の始まりは分かりにくいが、この眺望のよい岩場で二俣を同定でき、下降を始めた。
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秩父らしい立ち腐りが多く地盤が緩い原生林。分かりにくいがフィーリングでどんどん下った。
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地形図に明示されている崩壊地に出た。崩壊地を右に避けて下ったら、避けすぎて尾根をはずし、再度修正して尾根に戻った。稜線から崩壊地下の2100mあたりまでは地形が分かりにくかった。
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短いが気持ちのよい笹原があり、このへんで顕著な踏み跡を見つけ、快適下降になった。なお1870mあたりで尾根の分岐があり、左に吸い込まれそうになるが、正解は右。
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ナメラ沢二俣。
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ナメラ沢は基本ゴーロとナメ。斜面に踏み跡が見られたので濡れないでも歩ける。
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一枚岩の逆層のナメに、東のナメ沢をうっすら思い出した。つけっぱなしだったチェーンスパイクを脱いだ。
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こ、これは何のため?
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これは何も考えずに右岸から巻き下りたが、帰ってから遡行図を見たら右壁から登れると書いてあったので、クライムダウンすればよかったな。
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と、バーッと歩いていたら急に両岸が迫ってきて雰囲気が一変した。おや、と思って振り返ったら。
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沓切橋へ至る沢との二俣だった。ここから下流は久渡沢のようだ。ちょっと考えたが、せっかくなのでもう少し沢下降を続けることにした。
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このなかなか迫力のある2段滝は、右岸の土斜面から水流脇の岩をクライムダウン。ナメとゴーロのナメラ沢から急に渓相が変わったので驚いた。
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適当なところで林道に上がるつもりだったが、地形図からはまったく読み取れないゴルジュが続いている。左岸の側壁が高くて、なかなか上がれそうなポイントがない。粛々と歩きゴルジュを抜け、振り返ってその出口(入口?)を一枚。
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ようやく上がれそうな斜面があった。動物たちもこの斜面を使っているらしく、ものすごい濃い獣道が登山道のように伸びていた。
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ガードレールが見え終わりとなった。超久しぶりにとろこんにゃくを買って帰った。笛吹の湯は感染予防でお休みだった。
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平日のこの日、たまたま天気予報を見たら絶好の登山日和と書いてあって、 もうお山にどうしても行きたくなって休んで行った。3月とはいえ、なんでもない沢登りだったが、とっても楽しかったなぁ。

ファイブテンのウォーターテニー一辺倒の足回りだったが、一昨年に廃盤となり、現在新品ストックはあと一足である。ウォーターテニーはいざという時に温存したいので、モンベルで在庫を出してもらって初めてサワークライマーを買った。履いてみたところ、いいじゃんて感じ。フリクションはステルスラバーが圧倒的に勝っているが、それは靴の剛性と引き換えのものでもある。登山靴としての観点からはサワークライマーのほうが歩きやすいだろう。結局何でもいい気がしてくる。たぶんその時履いている靴が一番の靴なんだろう。

でもアンパラレルからまんまウォーターテニー出してくれればよいのに。

あー、あと今日は朝寒かったからか手ブレしている写真が多くて残念。

あー、西沢渓谷また行きたいなー。

 

道の駅みとみ(5:55)~近丸新道渡渉点(6:55)~奥ノ二俣(8:10~8:50)~大滝(9:15~9:45滝上)~西破山(11:10~11:50)~ナメラ沢二俣(12:55)~久渡沢出合(13:55)~道の駅みとみ(15:15)

装備:ヘルメット、チェーンスパイク

ルートは☟

www.yamareco.com