行程:道の駅みとみ~西沢渓谷~鶏冠谷出合から入渓~二俣を右俣に~終わりの40m大滝~奥ノ二俣を左沢~源頭の大ザレを登高~戸渡尾根~木賊山~破風山避難小屋から南尾根~ヌク沢左岸林道~ナレイ沢右岸尾根~西沢渓谷~道の駅みとみ
夜が白み始めるころ道の駅みとみに着いて、お仕度して歩き出した。先週ヌク沢に来た時より暖かい。いやー春だなー。鶏冠谷出合から入渓した。
10m魚止ノ滝は左岸に付けられた立派なフィックスで巻いた。登れそうにも見えるけど、朝一番の冷えたなか取り付くのはなかなかハードルが高い・・。
ゴーロを歩いて飯盛沢との二俣を過ぎると、ゴルジュ入口の2段ナメ滝。
3段12mナメ滝。結構ヌメってる。
逆さ「く」の字滝。渇水だからか、水流沿いを歩き以上クライミング未満でホイホイ登れる。
逆さ部分にはフィックスが連打されていて、いかにもゲレンデ感満載だが、水量が増えれば助かる存在なのかもしれない。
そこから深めの淵が2つばかり出てきたのを巻いたりしながら進んだ。連瀑帯みたいな感じだがどれも歩き以上クライミング未満で進める。
ゴルジュがいっとき開け、キレイなナメの向こうには・・、
右俣・左俣の二俣。さぁ休憩しましょう。右俣を見やると壁に隠れているが、25m滝がわずかに見えた。
右俣に入り、前衛の小滝を越えると・・
25m滝。流水溝状に水流が収束しており迫力がある。一直線に落ち口へと伸びる水流右側の岩に自然と目が向く。
真下から見てみるとなんだか登れそうな雰囲気を出してるんだけどなぁ。試しに5mほど登ってみたが、そこから上は難しくなりそうな予感。フリーではちょっと。あと、プロテクションがよくない感じがする。ロープもハーネスも何も持ってないので、またの機会にしましょう。
少し戻って左岸から高巻いた。20mほど岩と泥と根っこのルンゼっぽい急斜面を登り、木をつないでさらに登り、落ち口へトラバースした。最初の登りは悪かったので、もっと戻ってから巻き登ったほうが易しいかもしれない。
落ち口へダイレクトに下りた。
滝上は倒木が多いゴルジュとなり小滝がいくつか。倒木も何年も刺さっているのか、風景に溶け込んでいて違和感がない印象。
これは倒木を使って上がるが、落ち口まで2歩ほど落ち葉の上からスメアリングっぽい足置きとなり、ちょっと悪かった。
ゴルジュ内は気温が低くベルグラやつららが結構見られた。
ゴルジュ出口の30m滝の下部が見えてきた。左岸は積雪や凍結面が多かったので、右岸の岩場を登った。
上部はナメ滝になっていた。そのまま右岸側を登った。
ゴルジュを抜けると・・。おー、やっと陽がさしている!休憩タイムの予感。しかし今日は長~い行程をとる予定なので、15分だけぼんやりして出発した。
そこからは大小のナメ滝が断続的につづく右俣のハイライトである。いっとき日向の沢歩きになったり、日陰では積雪のなかの冬の沢歩きになったりした。
ナメが終わると奥ノ二俣の前の二俣となり、左俣に40m大滝が見える。多くの人はここで終わりにして戸渡尾根に抜けているようだ。何故だろう?遡行図にそう書かれているからか。お気軽沢登りが目的だからか。まぁ何でもいいけど、私はもちろん普通にこのまま木賊山まで登っていくつもりである。
40m大滝。40mもあるかなぁ。真下で見ると、25m滝よりも全然登れそうな雰囲気だけど、君子危うきに近寄らずである。また来ることがあったら、ロープとか持ってきて登りましょう。左岸から巻いた。
滝上から奥。「奥ノ二俣」はあまり気にしてなかったからか、積雪で見づらくなっていたからか、よく同定せずにスルーしてしまった。何も考えずに真っすぐ歩いていた。自分が歩いたのが「右沢」だと思っていたが・・。地形図しか持ってなかったので詳細がよく分からず、帰宅してからGPSの軌道と「東京周辺の沢」の遡行図を見てみた限り、おそらく「左沢」に進んだみたいだった。まぁどっちでもいいんだけど。
「東京周辺の沢」の遡行図。「東京起点120」よりも詳しく書かれている。もともと地形図で明瞭な崩壊記号へ向かっていくのが右沢だと勘違いしていた。最初から左沢を目指していたようだ。
左沢は、F1~5まで、10m前後の小滝が連なるゴルジュの連瀑帯となっていた。どれも小悪い。左沢F1はでかいCSの7mくらい。見ての通りアイスが露出しており、左岸から渋く巻いた。左岸も凍っている箇所が多くチェーンスパイクでは少々神経を使った。登れず残念。しかし今日は気温も高くアイスも薄いのでアックスクランポンがあったとしても怖そう。
F2は10mナメ?段々状?。これもアイスに隠れてた。これも左岸から巻いた。
F2の上はキレイなナメになっていた。
ナメの途中から両岸が広がり日当たり抜群になった。向こうに見えるF3は岩がちゃんと露出してくれてた。下地も悪くないし、せっかくだから取り付いてみよう!と思った。
F3は6mくらい。フレーク状のガバが続いていてフリークライミングって感じで登れるが、フレークは脆い部分もあるので注意が必要。Ⅳ+くらいか。
F3の途中から下を。楽しかった。
F4は5m×5mナメ×5mトイ状。倒木を使って登った。
抜けてからトイ状を見下ろした。チェーンスパイクで突っ張りムーブはちょっと怖かった。
最後のF5は7mCS。CSの直下まで上がって、バランスを取りながら右抜けした。Ⅳくらい。この滝上で完全に水流はなくなった。
F5を抜けると、「左沢の二俣」となる。地形図を見ると分かるのだが、右は崩壊記号へ、左は顕著な岩場記号へつづいている。もともと右の崩壊記号を目指していたし、見た目的にもよさそう。ということで右へ。
一瞬、これって奥壁じゃないか?!と見紛うばかりの光景だったが、実際足を踏み入れるとどこまでもザレザレでボロボロの岩が露出しているのみだった。全部で250~300mくらいか。これは奥壁じゃなくて「源頭の大ザレ」である。
ザレの流れの真ん中を忠実に歩いた。1歩進むごとに0.5歩沈んで戻る、といったあんばいで徒労感を覚えた。両岸はいつでも逃げられる樹林帯が広がっているので、ザレの真ん中をわざわざ歩くのはまさに徒労。なんだけど、個人的にはそういうの全然嫌いじゃないんだよなぁ。ただし、多少落石しながらの登高にどうしてもなってしまうので、他に人が入っている場合はやめておいたほうがよいでしょう。あー、でも左沢なんかには誰も入らないか。
源頭の大ザレの終わりが見えてきた。
ゴールテープのような倒木が終了点である。最後の最後で岩が露出しているところをほんの4mくらい登ることになるが、これがボロッボロで悪い。スタンスが崩れ滑落しそうになり、ほうほうの体で右の藪に逃げ込んだ。
樹林帯は積雪。動物たちの足跡が沢山見られた。戸渡尾根は崩壊した細い沢筋を挟んだ向こうにあるので、まずはその沢筋を巻こうと思い、軽く藪漕ぎしながら高度を上げることにした。ちなみにその沢筋はたぶん右沢だったのだろう。
登っていて、左のほうがなんか明るいなと思って左めに藪漕ぎしていると、地形図に明示されている崩壊地に出た。このザレと樹林のコンタクトラインは獣道になっているようで踏み跡が濃い。これを拾ってかなり快適に登らせてもらった。ありがとう動物たち。
見下ろすと広大なザレごしに広瀬ダムまで遠望できた。
再び藪に入ると、こんなシラビソが大規模に倒れまくっている箇所があった。なんだか不吉な予感のする場所だった。
藪はどんどん濃くなりしっかり藪漕ぎとなった。サクッと戸渡尾根の登山道に抜けられると思っていたので、これにはちょっぴりうんざりして一気にお疲れモードになった。
気が付けば酷使してきたチェーンスパイクのラバーが切れてしまっていた。
うおぉぉぉぉ、やっと登山道に出た。
登山道に出たのは2410mくらいの地点だったので、あっという間に木賊山山頂についた。さぁやっと休憩タイム。さて、今日は実は釜ノ沢東俣から沢下降しようと予定していたのだが、いま13:15。時間的にも体力的にも止めておきましょう。それでどこから下山しようか地形図を眺めていると、そうだ!破風山避難小屋の南尾根からヌク沢左岸林道を使って下山してみようと思い至った。戸渡尾根から下山する気が全くない自分にちょっと笑った。
読図下山になるとしたら時間的に余裕を持ちたいので、結局せっかくの木賊山山頂だったが15分程度の休憩で出発した。開けたところから破風山と手前の避難小屋がある鞍部が遠望できた。急いで駆け下りた。
が、シラビソの登山道にはいつものように足が止まり写真を撮る。
破風山避難小屋につき、南尾根を見やると何とも気持ちのよい笹原が広がっていて、自分の選択に間違いはなかったと勝手に思った。少し笹を歩くと踏み跡っぽくなり、それをたどると、間違いない、踏み跡どころかこりゃ登山道だ、となった。そして赤テープも短い間隔で付けられている。
遭難しようと思ってもできないほど短い間隔の赤テープに興ざめしつつも、尾根は非常に気持ちよく、ただただ楽しい下山の歩きになった。
シャクナゲのトンネル。強風の時もここは暖かいだろうなぁ。
30分ほどでヌク沢左岸林道の終点についた。橋のたもとで10分ほど休憩タイム。
林道はメンテナンスされているようだったが、橋にほど近い箇所で崩落で道が埋まっていた。もはや急ぐ必要もなくだらだら歩いた。
ナレイ沢を横切る手前で赤テープに誘われ、尾根に道を変えた。こっちのほうがショートカットできる。
そこからの尾根道も気持ちよく歩ける。結局、木賊山から2時間ほどで西沢渓谷のナレイ沢広場についた。そこから車を停めた道の駅みとみまですぐである。なお、今日は道の駅に泊まり、明日も西沢渓谷を散歩するつもり。いつもの温泉は休館となっていたので、コンビニで買い出しだけして、あとは車でだらだら過ごして夜を明かした。
鶏冠谷右俣~左沢は多彩な内容に富んでおり、ひとつの複合的な登山として非常によい山行ができた。思っていたよりずーっと充実した。こういうの好きな人には、多分とってもオススメ。
前半はゴーロ歩きから簡単なゴルジュ、美しいナメの連瀑帯、25m・40m大滝といった普通の沢登りの行程。後半は左沢F1~5まで小悪い小滝をどんどんクリアしていき、ザレとボロ岩の登高をこなし、藪漕ぎから木賊山の山頂に至るまでのアドバンストな行程。
大滝はロープレスではとても登ろうとは思わないので、またいつか登りに来てもいいなぁと思った。そのときはこんな寒々とした早春ではなく、新緑が美しい初夏がよい。その時も当然のごとく木賊山まで抜けることになるだろうが、一個ふと気になったのが「左沢の二俣」の左に行きつく岩場記号。次回があればこちらに足を踏み入れてみようか。
あー、あと鶏冠谷左俣も行ってみたいなぁ。
あー、そうだ。あと今日釜ノ沢行けなかったから、明日行こう。
道の駅みとみ(6:10)~鶏冠谷出合(6:50)~二俣・右俣(8:25)~40m大滝(10:40)~奥ノ二俣・右沢(10:50)~源頭の大ザレ(11:30)~木賊山(13:15~13:30)~破風山避難小屋(14:00)~南尾根でヌク沢左岸林道の末端(14:30)~西沢渓谷ナレイ沢広場(15:35)~道の駅みとみ(15:50)
装備:ヘルメット、チェーンスパイク
ルートは☟