不忘閣ヒュッテ跡に駐車し、ちょっと狭くて勾配も急な林道を自転車でダウンヒル。太平神社付近にとめて林道終点まで歩き、踏み跡から松川に入渓すると矢沢出合まですぐだった。
本当にミルキーブルーの水色。ラバー靴だが滑りも個人的には気にならない程度。白い岩盤にナメと小釜の連続。とっても特徴的な渓相に心が躍りすぎて逆にぼんやりしてしまった。ハート型の釜を見るのを楽しみにしていたが、何も考えておらずスルーしてしまった・・。さりとて戻る気にもならず、これも運命と思って先を急ぐ。今日は日帰りで稜線の藤十郎か、少なくともママ河原まで進んでしまうつもりなのだ。
ヒョウタン淵の手前に出てくる、象の鼻様の木が浮かぶ小滝。右巻き。
ヒョウタン淵と15m。美しいが透明度の低い水には入る気に全くならず、滝には近づけない。巻くのみ。少し戻って右岸のルンゼ状を藪登り。
藪登りは果てしなく続く。途中で残置支点もあるほど。ある程度登ってトラバースと思ったが、ずっと上方に見える尾根まで登らないと厳しそうだ。徐々にルンゼは斜度が増してきて、細い枝を掴んでいないと滑落してしまいそう。もちろん滑落は許されない。枝を頼りに尾根までどんどん登る。思った以上に大高巻きとなり、吾妻は巻きが結構悪いんだよな!と思い出す。
人の踏み跡とも獣道ともつかぬ跡を追い、また枝をつかんで一気に沢へ降りた。多分、人も稀に踏んではいるのだろうが、ライン的に獣道だろう。
穏やかな流れ。
左岸の岸壁からさらさらと水の糸が数条こぼれていた。
なんだかゴルジュって感じになると・・、
15mと10mの滝で出合う二俣となる。本流は左。
左の15m滝は巨釜を持った直瀑。右の10mは水流左がⅢ級ほどで、これを登って巻く。色的にすごいヌメってそうな雰囲気だったが、触ってみるとちょいヌメリ程度だった。
この印象的な淵を右からへつり進むと、
三俣となる。本流は左俣で、右に支流が二本。支流はこちらの写真の細い流れの中俣と、
もう一本の右俣は少し手前にあり、長い滝で出合っている。
深そうな釜のへつりはちょっとな・・・と、そう深くは考えずに中俣左岸の藪を登って巻くことに。木登りで結構登らされてから中俣を横断し、藪漕ぎで沢に復帰。ほぼ獣道が拾えた。下の写真は中俣を横断するところ。奥に見えるのは左俣本流の落ち口。
沢に復帰するとすぐに8m。右岸から低めに巻く。
巻き途中ですべやかな水の流れに目が細まる。
ごく短い連瀑状の向こうに豪快な15m。
15mは右岸から容易に巻く。
15m滝上の風景。沢はまた穏やかになる。
短いが東北っぽい感じのゴーロと、キレイなナメ。
次は2段ともプールをもった2段20m(10m・10m)を左岸から小さく巻く。写真は上段を巻き途中から。
40m。一瞬かなり戻ってまた大高巻きか、と思ったが水流左のブッシュがつながっており登れそうだ。それにしても見栄えのする滝だな。
容易そうなところから木登りで登り出すと、中段で壁に遮られるので水流側に少しトラバース。そこからまた木登りで落ち口まで。トラバース終わりでは1手だけ藪がつながっていない箇所があり、そこだけは緊張した。
40m滝上。左岸をへつった。
左に20mトイ状。登るのは藪に囲まれた真ん中右の凹角。
凹角はⅢ級の範疇。
癒し系の10m。今まで高曇りだったが、ここで短時間ながら陽光が差し込み、水をキラキラと照らした。プールのへつりにちょいビビりしたが、右岸の枝沢から容易に巻く。
明道沢出合に着く。
明道沢は赤い岩盤を酸性水が流れているという。この二俣でそれが松川に流入し、水の色が印象的なミルキーブルーに変わる。ミルキーブルーは何か特別な感じがして美しさすら感じてしまうが、実際は鉱害による汚染なのだから複雑である。
二俣から松川は透明な水が流れる。沢の印象がガラッと変わり、中津川本流にありそうな広い釜を持った小滝。右岸巻き。
次も似たような小滝を、右岸をへつって越える。
奥でゴルジュになり右岸を高巻く。ここも思った以上に高巻いた。
下降点に少し悩んだが、踏み跡をたどってトラバースしていくと鎖が2か所垂れており、沢へ容易に下降できた。もっとも鎖はかなり年代物なのであまり信用できない。
ふと右岸が強烈に立ってきて、高い側壁の隙間から水が流れ出ているのを見える。
太平温泉手前のゴルジュ。く、暗い。もちろん単独かつノースキルの私にこの突破は及びではないので、戻って右岸を高巻く。
また疲れる木登り・・。残置ロープを発見し、やったーと思ってとりあえず恐る恐る掴んでみるがほんの10m弱でロープは終わり、また延々と木登り。尾根まで登ってそのまま踏み跡を下降すると沢に戻れた。
ちょうどゴルジュの出口に降り立ち、暗い内部を見下ろす。
また広い釜をもった小滝を越えると、
大平温泉が見えてくる。いったん右岸を登って道に出て、行儀よく吊り橋を渡って温泉旅館の前に立つ。秘湯にぜひ入りたいところだが、時間はすでに14時近く。今日中に稜線の藤十郎まで抜けるつもりでいたが、そこまではとても届かなさそうだ。しかし、ママ河原の登山道渡渉点までは届くだろう。日没までそう余裕があるわけではなく、少々急ぐことに。
しかし勝手がよく分からず、とりあえず旅館の前にハシゴがあったので登ってみたが、これでは上流に行くことはできないと分かった。ハシゴの上から火焔滝がすぐそこに臨めた。戻って、旅館の方に、沢登りで来ていまして松川の上流に行きたいので通らせて頂いてもよいでしょうか、とお願いすると、快く通して頂けた。ただ、露天風呂を使用しているお客さんがいる時は待つなど配慮が必要だろう。完全に敷地内なので必ず旅館の方に断りを入れなければならない。
大平温泉を後にすると佐原沢を分け、名前が松川から間々川に変わる。沢は巨岩帯といった様相になる。
さきほどハシゴの上から見えたとおり、10分も歩けば火焔滝につく。40mの堂々とした滝だ。水流右がⅢ級ほどで登れるが、中段の残置アンカーからは難しくなりそうなので、藪に逃げて木登りで進み、落ち口付近でまた水流に戻った。
綺麗な残置アンカーが2か所あった。高巻き主体の松川にあって、火焔滝は滝登りを楽しめる唯一のスポットなのだろう。
火焔滝を過ぎるとすぐに剣急滝だ。50mの落差で、さらに威風堂々とした滝だ。側壁は完全に垂直で、そうまた大高巻きなんだろ、とお疲れモードにさらに拍車がかかる。すでに足が棒だが、時間に追われており短い撮影タイムののちすぐ巻きルート選定に入る。
滝の高巻きでは剣急滝のそれが最も大変だった。右岸の壁が藪に隠れるあたりに狙いを付けてルンゼ状の斜面を登ったがやはり壁に阻まれたため、下流側に戻る感じで壁をかわしてさらに木登りを続ける。トラバースできそうになり獣道を拾って進む。枝沢を一つ越えると枝尾根になり、下降点を見出そうと少しクライムダウンするが、そこからは懸垂しないと降りられない。沢床の状況がよく分からずこのまま降りたものか判断できない。結局ここで懸垂するよりも最後まで獣道を拾って自然に沢に降りるという選択肢をとり、クライムダウンした分登り返し、もう少しトラバースする。獣道がルンゼを沢に降りていくのが見える。それを拾うと、どうやら剣急滝の次に出てくるというY字滝の上方に降り立ったようだ。
剣急滝の巻きに時間がかかり燕滝20mに着いた頃にはもう15時半をまわっていた。幸いなことに大滝はこの燕滝で終わりなので、写真をとり、そそくさと高巻きルートを探る。
右岸のルンゼを拾って登るが、30mほどでリスクを感じるようになり左側の木登りにラインをかえる。剣急滝同様にまた大高巻きを覚悟。結局さっき巻き歩いた高度まで戻り、さらに高度を上げないと安全にトラバースできそうにない、と判断し、どんどん登る。・・・と、ふと気づくことが。
地形図を見たら、おそらく10~20分藪漕ぎしたら登山道に出そうだったのだ・・・。時間は16時。時間的には沢に復帰してママ河原から登山道を下山でもよさそうだが、もうここで終わりでもよいかな。そんな考えが浮かぶとたちまちすごい名案に思えてくる。ちゃんと燕滝まで見れたしもう十分だろ・・と囁くもう一人の自分。あの狭くて急な林道、暗くなってから運転するの、やだろ? さらに囁いてくる。もはやこれまで。高巻きの緊張感から解放され、すぐそこに出てくるであろう登山道へ向けルンルンで藪を漕ぐ自分しかいなかった。
あっと言う間に登山道に出て、あっと言う間に登山口まで下りた。藤十郎までは遠く届かず、ママ河原まですら届かなかった。それに何だかつまみ食い的ではあるが、松川の見所を満喫できたので、日帰りでよしとしましょう。
帰り、太平集落付近から夕焼け空。何気ない風景が心地よく感じる。松川の沢登りがとてもよかったからだろう。鉱害によってミルキーブルー色を呈していることには複雑な思いを抱かざるを得ないが、いつか透明になった松川を再訪し、昔ここはミルキーブルーだったんだよと懐かしむ日が来るとよい。そのときはきちんと藤十郎まで登りたい。うむ、また来る理由ができた。きっとまた来たい。
不忘閣ヒュッテ跡・起点(6:30)~林道終点から入渓→矢沢出合(7:15)~ヒョウタン淵(8:00)~三俣(9:30)~40m滝(11:05)~明道沢出合(11:55)~太平温泉(13:55)~火焔滝(14:20)~剣急滝(14:40)~燕滝(15:35)~登山道(16:10)~起点戻り(16:30)
装備:ダブル30、補助30、ハーケン・ハンマー(すべて不使用)
参考:福島登高会、その空の下で。。。
ルート☟
さて、この近辺に来たら絶対寄りたい喜多方ラーメン。下山後すぐ移動し、深夜までやっているという伊藤食堂で一杯食べ、道の駅で車中泊して翌朝はまた坂内本店。あ~、またこの山域に来たい! 喜多方ラーメン食べに来たい!
おわり