8/28~29 with Oさん
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できれば伊南川の出合から楢戸林道を歩き始めて、その末端から入渓したいところだったんですけど、アプローチがちょっと長すぎてくじけました。それで前沢林道から山越えして地形図上の楢戸林道の終点付近に出る計画にしてみました。それなら、楢戸林道の末端から入渓、という体をギリギリ保てる気がしたわけです。できれば出合から、という小さなこだわりに、今更ながら自分でも呆れてしまいますが。
8/28
前沢林道(7:20)~C827.8南方コル(9:15)~楢戸沢入渓(10:15)~C567二俣(12:05)~C830二俣(15:50)
前沢林道は1.5㎞ほどで藪に消え沢を歩いた。かつての橋の残骸があった。沢は滑るが滝もない小沢である。C540で右俣に入った。
すぐに藪漕ぎ半分の詰めとなり、暑さもあいまっていきなりお疲れモード。とはいえ出発して2時間もかからずC827.8峰南方のコルにつき一本。
下降も藪漕ぎ半分で下っていると、急に水が消え猛烈な笹薮で埋め尽くされた。何かと思って笹を漕いでみるとコンクリートの壁が現れ、それは10m級の堰堤だった。藪に埋没した堰堤が3個続いた。
薄い踏み跡を拾っていると、おやこれはもう楢戸林道では? このあたりの林道はとっくに自然に還っているらしい。
楢戸沢を見下ろす。小尾根を拾って沢に降りた。
10時すぎごろに入渓した。穏やかな流れに癒されるー。あと魚影が非常に濃い。私は釣りをしないので魚影を気にすることがほとんどないが、それでも水中をすごいスピードで逃げていく影が何度も何度も視界に入る。パートナーは釣りの上手なOさんだし、彼のザックにはテンカラ竿が入っているはず・・。
ときにゴルジュになってへつる。足跡もわずかに見られ、このあたりは釣り師も入っているようだ。
いやー美しい渓相。が、先が長いのでちょっとだけ時計を気にしながら歩く。
C567二俣で休憩。まだ先が長いから・・、と我慢していたOさんだが、ついに竿を出した。するとすぐにイワナがかかった。ここではもちろんリリース。
二俣を境に沢幅が狭まり、沢歩きから沢登りな感じになる。だんだんと両岸もスラブ的になってくる。
C580二俣の左俣を見やる。水無沢から山越えする場合はここから入渓するのだろう。すぐそこに二条の滝が見えた。あれは懸垂で下りてくるのかなぁ。歩くだけの前沢と違って大変なのかしら。
C650くらいで狭隘なV字ゴルジュになった。奥がなんか深そうだったので、戻って左岸から藪を漕いで高巻きした。巻き途中で太いブナの木にナタメを見つけた。こういうところって猟師のフィールドだな。
沢は両岸を高い尾根に挟まれた一本道のようだ。集水域も狭い。また、勾配がゆるくなかなか標高を稼げなくて、なんだかもう長いこと歩いた気分になる。入渓してからまだ3時間かそこらなのに。小滝があったり、へつりがあったり、その後も粛々と歩く。天気も予報のとおり低層曇りになってきて、降りそうになってきた。
そして、もうぼちぼち初日のめどが立ったかなと思い、Oさんどうぞ、もう大丈夫でしょう、ということで釣り解禁。粛々モードから解放され、途中からのんびり釣り上がることに。一匹だけキープ。雨はほんのちょっとだけ小雨が降って止んだ。
C750くらいで6mくらいの小滝。初めてロープを出して越えた。全荷で登ったら結構渋い。空身になればよかった。
C830二俣。下の二俣についた。ここでお泊まり。荒れたのか沢沿いは適地がない。
右岸の踏み跡を少しあがってみると、ブナのたもとにテント一張り分の平坦地が。ブナにはナタメも付けられている。猟師がここに泊まって、この森を自由に動いていたのだろう。どうやってこんな適地を見つけたのだろう。すごいなー。ここ水から遠いのにやたら快適。気温も下がってきたため、なんと虫もあまり出てこない。タープを張ると雨が断続的に降ってきた。
調味料を持ってなかったので、イワナは長時間焚火で炙っただけだったけど、えらくおいしかった。20時ごろ寝た。小雨が降ったり止んだりだったが、深夜、降り続くようになり、雨がタープを叩く音がずっとバタバタと鳴っていた。3時間くらい降った。
8/29
BP(6:55)~C1070二俣(9:05)~C1320付近右俣(13:25)~奥壁スラブ基部(14:15)~稜線(15:15)~会津朝日岳(15:25)~登山口(18:40)
翌朝、時化た焚火をもう一度盛り上げて軽くあったまってから出発。集水域の狭い沢で助かった。増水は見られない。少し歩くと明らかなゴルジュに入る。巻きだろうなーと思いつつ、とりあえず小滝を登って奥に進むが、
出口らしきこの滝が超えられず全部戻って左岸を高巻き。巻きが悪い。
巻き途中。下方はニラしか生えてないスラブなので、ある程度登って、しっかりした藪を掴んでトラバースした。しかし、獣道ベースの巻きラインではなかなか下降点を見出せず、結局30分は巻き進み、最終的に最後まで獣道で沢に降りた。昨晩の雨のためか、足元がグズグズで最悪だった。
それから1070m二俣に至った。沢の奥はそれまでと様相が変わり、ものものしいV字に。いよいよ核心部に入る感がある。
7mくらいの滝。右から登れそうだったがシャワーを嫌って巻いた。この巻きは私には非常に悪かった。なるべく小さく巻こうと、ニラと藪のコンタクトラインの泥面についた獣道をトラバースしたが、悪すぎて正直死ぬ思いをした。過呼吸気味でなんとか巻いた。Oさんに、正直この手のトラバースはできれば避けたいです・・、と伝えた。巻くならば、トラバースにはしっかりした藪を使い、登下降は直線的にロープを出すべきだったと、後になって、ゴルジュを抜けてから思った。
C1100くらいで沢が左にゆるやかに曲がり、向こうに会津朝日らしき山稜を遠望できた。この先はまた小悪い小滝が続く。
これは意外に簡単に右巻き。
これは痺れる右巻き。私が痺れすぎてかなり時間がかかった。
これは簡単。
これはボルダリングで6級くらい?
・・などと進むと、C1320付近で左岸側壁の角度がゆるくなり、細い支流のはるか上方にスラブ面が遠望できた。あれが北壁スラブではとOさんと打ち合わせ。事前にGoogle Earthと地形図を検討した結果、C1300~1350あたり、ちょうど地形図の会津朝日岳の「岳」のちょっと上くらいが、スラブへの分岐だと想定していた。いまそこに居て、どうやらスラブを見ることができているらしい。はるか上方、そして逆光のため確信はもてないが、これ以上沢を詰めると登山道の稜線に吸い込まれてしまいそうだ。決めた。この細い支流を登ることにしましょう。
この細い支流は凹角状の小悪い小滝が3つほど。強引に登った。
すると視界が一気に開けてくる。あの向こうにスラブがバーッと広がるはず。確信した。この上にスラブがある。
スラブの最下部は広いルンゼ状だ。クライミングシューズは持ってきたが必要を感じず、沢靴でスタコラ登り出す。
やっと来れた。
中腹のテラスで大休止。Oさんに一枚だけ自分を撮ってもらっちゃった。
スラブの左側には深いルンゼが走っている。ルンゼ沿いを登った。部分的にⅢ級だが、ほぼⅡ級かそれくらいな感じ。上部は立ってくるので、難しいクライミングになるのを避け、右の支稜に逃げた。支稜に乗ったところに、
素晴らしいテラスがあった。2泊だったらここに泊まりたかったなー。
稜線に出ると藪漕ぎで山頂へ向かう。途中でスラブをすべて見下ろすポイント。左上の日が当たっているところがさっきのテラスだ。
10分かそこら藪漕ぎしていたら、突然藪が途切れ、会津朝日岳の山頂に飛び出した。山頂だー。やったー。・・たった1泊なのに、私にとってはなんだかやけに長く感じた旅が終わった。いやまだ下山があるけど。Oさんとハグした。恥ずかしげもなくオッサン同士でハグするに値するルートだったと思う。ありがとう。おかげさまでここまで来れました。
帰りの登山道をだらだら歩く途中で、スラブが見渡せるところがあった。やっとこさ、落ち着いた気持ちでスラブを眺めることができた。
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いままでで巻きが一番悪かった気がします。特に足元の泥や土がえらくグズグズで、履きなれていない靴だったこともあり、何度か致命的なスリップをしそうになりました。はっきり言って怖かったです。もっとよく考えて巻くべきでした。登れたであろう滝をいくつか巻きましたが、安易に巻きを選択せず、滝を登れるなら登ったほうがよかった気がします。あと長い距離を懸垂下降できるようにロープは2本あったほうが無難だと思います。
ルートはストーリーがあって、とっても素晴らしかったです。一本道の沢を辿って辿っていくと、やがて厳しさが増してきて、一つひとつきちんとこなした後に、憧れの奥壁スラブが待っています。残置も何もなく、美しい静けさを保っています。もしも次行くとしたら、スラブ右の支稜にあった絶景のテラスに泊まりたいですね。もう行くことはないでしょうけど・・。
8/28 前沢林道(7:20)~C827.8南方コル(9:15)~楢戸沢入渓(10:15)~C567二俣(12:05)~C830二俣(15:50)
8/29 BP(6:55)~C1070二俣(9:05)~C1360付近右俣(13:25)~奥壁スラブ基部(14:15)~稜線(15:15)~会津朝日岳(15:25)~登山口(18:40)
装備:ダブルロープ50m×1、補助ロープ25m×1、ハーケン・ハンマー、カムナッツ小さめ一式、クライミングシューズ
ルート☟