昨年雨飾山の難ルートにご一緒したNさんと、初めてお会いする若いYさんと3人で、1泊2日の楽しいスラブ滝の旅。今日は西ゼン、明日は東ゼンを巡る予定だが、明日は悪天の可能性大・・。そのため代替案として支流のダイコンオロシ沢をピックアップしている。お気楽かつ用意周到なのだ。
車を停めた林道ゲートから1時間ほどで渡渉点に着き、お仕度して入渓。地味に滑りやすい。
まず適地を探しながら歩いた。目星を付けていたダイコンオロシ沢付近、C1010m左岸の傍流でそれを見出し、要らんもんをデポした。渡渉点を出発してから1時間ほどで沢床がスラブ状の構成になってきて、まもなく明瞭な西ゼン東ゼンの二俣に着いた。門のような小滝が印象的だ。
こちらは左俣の東ゼン。奥に60mという大滝が遠望できた。あんなん登れんのかいな、という感じ。
こちらが今日進む右俣の西ゼン。ここで僕はビビッときてNさんに思わず「ここってきっとスタコラ登れるスラブですよね?」と声が出た。「スタコラかって言ったらそりゃスタコラでしょう」みたいな返事をNさんがくれて色めき立った。西ゼン、メジャーなルートなので逆に全く興味を持ったことがなく、今回もガイドブックのコピーを持参しただけで何も調べていなかった。ずっと上のほうに広がっているのは、ありゃ間違いなくスタコラ登れるスラブだ。でも最初のこのスラブ滝はヌメってそうだし傾斜もある。おとなしく巻きましょう。
左岸に濃ゆい踏み跡があった。そのあとも滑ったスラブ滝が続き、いろいろな踏み跡が付けられていた。さすがメジャー沢。
滑ったスラブ滝が終わり、スラブとスラブをつなぐ通路のような沢筋を歩く。出合で確信した、心が求めてやまないあのスラブが近くなってきた。
遡行図でいう3段10mのこちらを左岸から簡単に登ると、目の前に、
スラブが広がった。あー。
遡行図には第一スラブと書いてあった。傾斜はゆるい。歩行以上クライミング以下といった塩梅で進む。これが楽しいんだよ。
あっと言う間に第一スラブが終わると、またスラブとスラブをつなぐ通路。
そして、こちらの2段15mを右岸から巻くと、
(なお、右岸巻きではちょうどいいところにデカい転石が2つ転がっていて、ガバで持ちたくなるが、要注意である。もしあれを落としたらヤバい。)
で、それを越えたら前衛の小滝(3段15m)。あとわずかだ。
第二スラブ。あー。
より乾いている右岸に登路を求めた。スタコラ登れるスラブとはいえ滑落すれば致命的で、失敗は絶対に許されない、などと自分を戒める気にもならない。素直にいえば自信があるのだ。これほどまでの楽しさと等分の集中力が自分の手足を支配している、と感じた。いつものごとく、あっと言う間に登ってしまって、あっと言う間に終わってしまうんだ。もったいない。休憩しようよ。もっとここに居させておくれよ。
テラスで振り返れば、紅葉の真っ盛り・・・というほどでもなく笑。
再開。すぐに終わりが近い。
最後は傾斜が強くなり、10mかそこらの終わりの滝を右岸から越えると、
終わりと思っていたら実はまだ終わりではなく、この壁のような5mほどの小滝で本当の終わりになった。
そして笹原を割って流れるようになった。
C1630m二俣。左俣に行くと「お花畑」らしいが、右俣には滝が見えた。せっかくなので僕の勝手な希望で滝を選び、右俣へ。
しかし滝が終わると豪快な笹の藪漕ぎから、
C1780あたりで池塘に出て沢筋が終わってしまった。これじゃないらしい。
さっきの二俣は左俣がよかったらしい。そっちの沢筋に藪漕ぎトラバースした。超久しぶりの藪漕ぎでNさんとYさんについていくので精一杯。お二方はとっても強い。
トンネル。ずっと踏ん張ってて足が痛い。いま左足が足底筋膜炎なんだよ。
やっと登山道に出た。一応山頂にご挨拶して、デポ地に下山。
下山途中で第二スラブを見やった。遠望していると、なんかとんでもないところを登ったように見えるものだ。
久々の沢泊。ではまた明日。
ひねくれ者なので「西ゼン」なんて超メジャーなルートには全く興味を持っていなかったが、行ってみたら最高であった。スラブ滝。あえて言いかえれば奥壁スラブ。沢でいろいろ頑張って一つひとつを乗り越えた先に、ご褒美のほうにやっと現れるのが、奥壁スラブ・・、と思っていたが、西ゼンではいきなりご褒美といった感じ。いつも憧憬しているスラブがあった。スタコラ登っているときが一番楽しいのだ。そんな時間を西ゼンで過ごした。
林道ゲート(6:30)~渡渉点入渓(7:40)~西ゼン・東ゼン二俣(8:50)~第二スラブ終わりの滝(10:40)~登山道(12:10)~平標山(12:40)~C1010m左岸幕営地(15:00)
装備:ダブル50m*1、ハーケン・ハンマー(不使用)
参考:沢登り銘渓62選
ルート☟