隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

中又白谷

 

徳沢(8:00)~F1(9:30-11:40)~F3CS(12:10)~F8基部(13:15)~C2160mスラブ基部(14:10)~奥又池(15:25-16:05)~徳沢戻り(17:40)

装備:ダブルロープ50m*1、カム1セット(#0.2~1)

ルート☟

 

 

三連休は屏風岩の計画だったけれど、天気が全然ダメで朝に中又白谷に転進することに決めたんだ。中又白谷については以前登山大系で読んだ内容はとうに忘れてしまっていて・・、ネットでF1とF8があるくらい把握して、あとは現場判断である。ハーケン・ハンマーを持ってきていないのが、強いて言えば不安材料か。多少の山域理解もあるつもりだし、まあいいでしょう。

 

中又白谷の押し出しのゴーロは林道まで伸びていた気もするが記憶が定かでない。とりあえずフィーリングで適当なところから藪に入り、藪を本格的に彷徨い漕ぐ。ふん、まあいいでしょう。

 

40分くらい彷徨ってやっと本流ゴーロに行きついた・・。無駄に藪を漕いだと確信したが、まあいいでしょう。それにしても暑い。

 

暑い・・、ダレる・・。あれは・・。向こうに見えてきたF1は・・、水流が涸れているように見える。そりゃマズイ。まあいいでしょう、とは言い難いぜ。熱中症で死ぬよ? 水が汲めなかったら、はっきり言って敗退やむなしだぜ? ちらりとパートナーのNさんを見やる。きみはどう思っているんだい?

 

しかしやがて水が流れる音がかすかに聞こえ出してきた。F1の壁、天地真ん中くらいから二条の水が落ちているのが確認でき、心底ホッとした。うおおと叫びながら水浴びして大休止。それからやっとハーネスとか装着し、ロープを結んだ。

 

ラインは明瞭に右壁で、バンドに上がって落口へと左めに直上するか、右の水流沿いに藪を巻き登るかだろ。安パイなのは明瞭に後者。1pは僕が45mくらい伸ばすとテラスに残置アンカーがあった。

 

2pはNさん。一部垂直の藪を上がって落ち口方面へトラバースする40m。

 

3pは僕がトラバースの続き20m。岩をつないで上めをトラバースしたので、結果的にF1のひとつ上の落ち口へ抜けた。

 

F1落ち口のほうを見下ろす。

 

F3のリングボルトが打たれたCSのようだ(Fナンバーは帰宅して大系を見て分かった)。フリーでも登れそうだがバランスが悪い。フォールしたらどこまでも墜ちていくかもしれないので、無難にカムエイドからの乗り込みで抜けた。

Nさんを迎え入れる。

 

次もハングしたCSだったが、左壁が簡単に登れた。

 

すると右岸にのっぺりとしたきれいなスラブ面が伸びている。沢筋はここからかなり不安定なガレザレが堆積した急斜面になり、

 

20回くらい足を置いたら1回は滑り墜ちるんじゃないかという危うさで、超頑張って登る。

 

上を見上げるとガレの起点となる崩壊したルンゼになっていて、中又白谷はこれではないと気づく。左を見やると、

 

さっき下で見たスラブが本流だったようだ。白い岩肌を慎重にトラバースして乗る。ここからは傾斜がやや強いがガバをつないだクライミングになるようだ。上方に見えるテラスっぽくなっているところまで約15m。簡単そうだが足元が切れ落ち、失敗は決して許されない。自分が先に登り、必要であればテラスからNさんをビレイする、と決めて一気に登った。

 

見下ろすとなかなかの光景。

 

登っていると、見えてくるのは・・、

 

 

F8らしい。F1からF8までわずかな距離に全部詰まっている・・(とはいってもF2~7がどれだったのかよくわからなかったけど)。

 

 

F8の壁。舞台の上に聳えるような圧巻の光景。

 

まあ僕らはF8には手を付けません。ハーケンももってないしね。分相応に右岸の藪を巻く。

 

F8落ち口から下を見やる。

 

そこから上は・・・、スタコラ登れそうなスラブが広がってる! ホールドがしっかりある系のスラブである。スラブの終わりがV字になっている。あそこまでバーッと登ると・・、

 

いったん傾斜が緩み、C2140mあたりの岩場記号らしき箇所を通過する。

 

すると、またスラブが。今度はフリクション系の純然たるスラブで、長い。Nさんが「200m」と教えてくれた。200mは距離ではなく、C2160~2360mの標高差のようだ。

スタコラ登る。

また暑くなってきたのでポットフォールの水を軽く浴びる。

一部傾斜が強い。

スタコラなのかヘロヘロなのか、もはや分からない時間を過ごす。

いたずらに強点をついてみる。

落ち口が近い。

あー、終わりだ・・。

 

 

C2160~2360mの標高差200mはすべて白いスラブになった。スタコラ登れるまさにスラブの醍醐味そのものだ。しかるに「クライマー」にとってはかったるい詰めというだけで、F1やF8のように興味が湧くものではないのだろう。それがまた隠微な歓びめいていて、よい。

 

あとは一気に細くなった沢筋を詰める。

 

緑の生い茂りが色濃くなり・・、

 

奥又白池の水場に到着。ちょろちょろだが湧いてくれてて助かる。

 

奥又白池へ抜け、1時間近く頭を空っぽにして休憩タイム。

 

見上げれば左側、A沢の右岸に第一尾根第四支稜の頭とその向こうに第一尾根の頭が見える。

 

そして今回いけなかった屏風の頭から北尾根・・。まあいいでしょう。急な転進で来た中又白谷だったが、そのうち行こうと思っていたし、今日が行くタイミングだったってことだろ。中畠新道をバーっと徳沢まで。ちらりと見るとNさんの顔が会心の山行だったときの顔をしている。それを見て得も言われぬ満足感を覚えた。徳沢でビール買ってめちゃくちゃ飲んで寝た。

 

 

朝起きて、徳沢から帰るだけ。

昨夜は未明から雨音がツエルトを叩き始め、日中も終日雨だ。キャンプ場の登山者は、雨のなか午前3時ごろから撤収を始める音が聞こえ始め、5時くらいには2/3以上の人たちがいなくなっていた。帰るだけなら早起きしなくてもいいだろと思う。だから帰るのではなく、どこか続けて登りにいくんだろ。雨のなか、どこへ登りにいくのだろう・・、濃霧と風雨に包まれた視界のない登山。それもいいものだとは思うけど、あー、三連休最終日の明日は晴れるから、つなぎの一日として頑張るのかしら。

子どものときから長いこと普通の登山をしてきたのに、登山者の行動原理がよくわからなくなっていることを自覚した。

 

明神橋のずっと右上の向こうに、ひょうたん池のコルが。いつか三本槍を眺めながら飲むためだけに行きたい・・。

 

最後に、岳沢を見やる。コブ沢の右岸、畳岩尾根の末端がガスの下端からわずかに見える。今年はこれが最後かな。また来ますよ。

 

 

 

おわり