道の駅みとみ(6:50)~鶏冠谷出合(7:50)~東のナメ沢出合(9:20)~300mナメ滝(10:00-13:30)~第ニ岩峰(16:05)~鶏冠谷出合(17:20)
装備:ダブル50m、カム小さめ1セット・ボールナッツ、トライカム、ハーケン・ハンマー
ルート☟
何度も歩いてきた東沢のアプローチ。
いつもの「山の神」。過去に気にしないで通り過ぎしまったこと数回。なんとなく気にするようになって、今回も、あれ通り過ぎたのか?まだだっけ?ときょろきょろして、あーあった、と見つけて手を合わせるのが特段意味はないがルーチンになっている。
東御築江沢や影ノ乙女沢のスラブなど、そのうち行こうと思っている、少なくなってきた行ってない支流をチラ見して、東のナメ沢出合につく。
お仕度してとりあえずフリーで左岸を登り、水流をまたいで右岸へ。今日は曇り空で湿度が高めの環境で、なんか滑りそうで怖い気がする。残置ボルトがあったので、そこからロープを出すことにした。
1pはパートナーのSさんが率先して簡単そうに登って行った。やる気に満ちていていいですね。ちなみに1段目と2段目というのはよう分からん。3段目は、3段目なのかどうかはともかくとして、トポのとおり傾斜が全然強くなるのであれだろと分かるのだが。
2pは私だったが・・、いたずらに強点をつこうと直上したら、ランナウトしてから悪いハイステップのスメアを強いられ肝を冷やした。なんてこったと思いながらロープいっぱいまで登ったところ、アンカーもうまく作れず無駄に時間を使った。Sさんが普通に登ってきてくれたのでホッとした。
3pはSさん。どうやら正規ライン?と思しきちょい濡れの左上バンドを上がって、木登りから、さらにフレークを持ったスラブを上がっていく。このピッチは山の中のスラブだぜって感じで楽しかった。
4pは私。軽く上がると藪に踏み跡が伸びていたので深くは考えずに突撃し、スラブと藪のコンタクトラインをロープいっぱいまで伸ばした。我ながらダサいライン取りだなと思ったが、多分トポ通りだからいいだろ。
3段目の基部まであとちょっとだったので、続けて私が5pもロープを引いて15mくらい伸ばした。
6pが核心かね。Sさんが強傾斜を上がったあと、右に左に動いてどっちに抜けるか検討しているらしい。逡巡しているとも取れたが、やがて右のほうへと抜けていった。フォローで登ってみると、そこは頭上にガバフレークが見え、リーチがあれば簡単に掴めるが、ないと距離出しが怖そうな感じ。私がギリ届くくらいだったので、私より10cmくらい小さいSさんはなかなかのチャレンジだったことだろう。いや簡単だったのかな?
下を見やると素晴らしい光景。この写真はここに来た誰もが撮るだろ?
最後となった4段目の7pも、Sさんどうぞ行ってくださいと送り出す。やや傾斜が強いがほどよく支点も取れ、ホールドもあり、楽しいスメア登りでフィニッシュ。3時間半ほどかけてトップアウトした。
あとは一ノ沢を忠実に詰めた。
どこだったか忘れたが途中で水枯れ・・。
最後は稜線直下の岩壁を右に巻いて鶏冠尾根の登山道に出た。
16時にやっとこさ第二岩峰。不安定な天気だったが、もってくれてよかった。雲の動きがおどろおどろしく、時間のわりに薄暗いのがまた悪くない。このピークは来るたび違う表情を見せてくれる気がして、とても気に入っている。そして大抵時間に追われている・・笑。
楽しい登山道をバーッと歩いて鶏冠谷出合に降り立った。
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2回目の4段300mのスラブ滝登攀だった。初めて登った8年前は、私はちょっとイケイケなクライマーって感じだったので、2時間もかからずトップアウトしていて、そもそもロープも3Pくらいしか出していなかった。そのときから歳もとったし、怪我もしたし、やる気も失ったりしたし、どれくらい登れなくなっちゃったんだろうか・・と内心ではキュッとなっていたが、モチベーションに溢れるSさんのおかげで思ったより普通(?)に登れて安堵した。身につけた技術はそんなに落ちないんだなぁと思った。
それより劣化・・というか、勘違いしていたのは、記憶力である。あそこはああだったとか、こうだったとか、記憶を頼りにSさんにしゃべっていたほとんどの情報が全然間違っていた。記憶では白いスラブだったが、実際はちょっと黒っぽかった。3段目と4段目を取り違えていた。ボルトの存在も忘れていた。などなど。忘れないように記録を残しているのに、記憶はあやふやなものになっていて、なんか自分にがっかりした。
でも、8年前の写真をあらためて見返したら、どうでもよいが「おー」と思ったことがあった。3段目落ち口(4段目基部)の「木」である。前回はブッシュって感じでアンカーにできるようなものではなかったが、今回はまぁまぁしっかりと根付いた立ち木になっていて、Sさんがアンカーに使用していた。フォローで登りついた際、こんな木あったっけ?と思ったのだが、あったのだった。写真を見比べてみて、ときの流れとともに自然が着実に成長していく様を描いた縮図を見た気になり、それはとても心地よいものに感じられた。
心のなかで木に語りかけてみよう。もう8年したらきみはどんな木になっているのかね? もっとでかくなってるのかね? いいだろう。またきみを見に、2032年あたりに登りに来よう。
なんて、そんなふうに思ってもすぐ忘れてしまうんだろうけどな。
おわり