大系によると「金峰山の五丈岩の左手に、高距150~200mの金峰山では最大の岩場がある。いわゆる千代の吹上げと称する岩場で、第一岩稜、第一フェース、第二岩稜、第二フェース、第三岩稜、第四岩稜で構成されている。~~うにょうにょ~~、訪れる人も少ない」だそう。と言うか、私は記録を見たことがない。
大弛峠イン/アウトの縦走路経由で、偵察しながら日帰りで・・と思って、"ドロ壁師匠"(笑)ことAさんと来た。・・来たわけだが、われわれとしては大系に記録のない第三岩稜に狙いをつけて登攀開始したつもりだったけれど、地形その他の内容からどうも変だ、違うのでは・・?と疑いをもち、最終的に「白い尖峰」が特定できたことから、第四岩稜を登ったんだと確信を持てた。概念図と実際の地形は、晴天下に肉眼で観察してもよく一致せず、結局のところ最後までよく分からなかった。ひとつ確かに分かったのは、第三岩稜は藪岩で簡単だから記録がないのではと予想していたが、ぜんぜん逆で、ものすごい花崗岩フェースに切り立った岩稜で多分ヤバくて登られてないらしいことだった。
☟大系概念図に登ったラインを赤線で示した。
登山道下降点から藪つかみ下降。
木々の隙間からでかい岩場が見えた。(この時は分からなかったが、これが白い尖峰だと、あとになって判明した。)
白い尖峰。
さらに下降し、左岸側にバカでかいフェース。写真では分からないが50m級で、最初第二岩稜のどこかと思っていたが、第三岩稜下部のフェースだったらしい。
登り始めるのによさそうなところを見出し開始。1P:10m Aさん。木登りで岩稜コルまで。じめっとした取り付きで、ビレイ中足をブヨにやられた。
2P:40m 私。ブッシュ混じりの段々フェースから風化花崗岩スラブのトラバース。今までで一番風化具合が激しく、ボロボロと崩れていく表面にギョッとした。マジかと思って正直心が折れそうだったが、硬い部分が出るまでホールドを入念に掘った。頼りない細木の支点でランナウトするのが非常におそろしく、目の前の登攀に集中するため、年甲斐もなく叫びながら登ってしまった。テラスのブッシュで切る。
3P:40m Aさん。同じくスラブ。傾斜強めの直登ラインはさらに風化が激しく、根本まで埋めたボルトがすぐ抜けてしまった。それも2本・・。きわどくクライムダウンし、右側の垂壁からスラブに乗り換えるラインにかえた。5m垂壁を上がって、縦ホールドで外傾スタンスを踏んでのっぺりしたカンテを回り込む悪いムーブをこなして、あとはプッシュ主体のスラブ登り。ブッシュで切る。フォローでもコワカッタ・・。
4P:40m 私。ここは打って変わって、緩め、そして硬めのスラブで、10mほど登るとフレークにカムが入ったので安心してスタコラと登れた。コワイのは望んでなくて、こういうスタコラ登れるのを望んでいるわけだよ? ホッとした。
アンカーから左上方に岩塔が見えた。自然とあれに向かっていこうという気になる。そして、あれが「白い尖峰」なのだと、もう少し後になってから知ることになる。
5P:50m Aさん。スラブトラバースからブッシュ。顕著な岩稜としての第四岩稜は終わりになった。(右奥へと藪まじりの岩稜が続いているようだったが、気持ちは霞がかかった尖峰に向いていた。)
6~8P:100mくらい? コンテで藪こぎ→大系の言う「赤いガリー」→白い尖峰の取り付き。
9P:20m Aさん。「白い尖峰」は末端から登るのは難しそうなので、右奥に見出した弱点ラインでピークまで最短距離を登った。でかいCSをくぐってチムニー登りと立体的ムーブで、プロテクションもよくて楽しいピッチになった。
唯一の残置ハーケンを見つけた。
ピークから第三岩稜上部と思われるラインを見た。いや、違う岩稜かも?
登攀終了し大系のいう300mの藪漕ぎで稜線登山道に戻った。大休止して登山道を歩き出す頃には千代の吹上側にはガスが立ち込め、再びの観察は叶わず、粛々と歩くことになった。
ご一緒したAさんの記録はこちら
大弛峠(4:45)~下降点(8:05)~登攀開始(8:45)~白い尖峰ピーク(11:40)~登山道戻り(12:40)~起点戻り(15:35)
装備:ダブルロープ50m*2、カム2セット、ハンマー・ハーケン
ルート☟