2018年4月29日~5月1日
宮崎クライミングツアー(2018)
with Okさん、Fさん、O君
去年はじめて行った宮崎の比叡山、雌鉾岳のクライミング。思った以上にすばらしく、毎年通って、魅力的なロングルートを一つひとつ登り重ねていきたいなぁ、とクライミングの新たな目標ができた。それから1年の間、次はあのルート、その次はあのルートで、・・・などと、実力を度外視した妄想が尽きない。
昨年ご一緒した自由人のWさんは今年は仕事でダメとなったが、今回はOkさん、Fさん、O君というかなり強いめのクライマーが3人も一緒に行ってくれることになり、行く前から感無量であった。もっともクライミングツアーなどと言っても、自分の家庭事情では2泊3日が精一杯ではあるが。今回の3人は宮崎の岩場は初めてなので、自分がここがよいと思うようになったクライミングを追体験してもらいたい、と思い、去年と同様、比叡山と雌鉾岳の看板ルートを巡ることにした。当初行きたいと思っていた小積ダキや雄鉾岳のルートは、また来年以降に考えよう。
初日。昨年と同様、はじめの1本は、比叡山1峰の第1スラブルートにした。はじめのピッチはアルパイングレードが適当な簡単なスラブだ。僕とFさん、OkさんとO君がペアを組んで登り出した。↓は1p目を登るFさん。上部で左上して木で切った。
2p目は僕がノーマルルートのこれまた簡単なスラブを登った。↓はノーマルルート3p目のリッジ状を登るFさん。安定してはいそうだが、岩がカタカタ鳴って少し気持ち悪い。支点はカムでも取り放題なので、カムがあったほうが安心だろう。
ビレイ中に左を見ると、スーパールートにラインをかえたOkさんが綺麗なスラブを登っているのが見えた(↓)。バックは空と緑になっており、見栄えがよい。Okさんも「いい」と言いながら登っており、僕もそっちを登ればよかったなぁと軽く後悔した。第1スラブルートはスーパーのほうがかっこいい。
Okさんのほうも、フォローでノーマルの3p目を登る僕の写真を撮ってくれた(↓)。記憶にないが、なぜか無駄にヒールをしている。
4p目終了点からフォローのFさん(↓)。振り返ると視界が開け、登ってきたなぁという感じが味わえる。4p目はたしか快適なフェースな感じだった。ただし、この辺から以前にはなかったチョークがベタベタに付けられており、その点が残念だった。登った結果付いたものではなく、明らかにガイディングのために意図的に付けたものだろう。雨とともに消えていくとよいのだが。
5p目(↓)。快適だったという以外内容を覚えていない・・。
↓はスーパールートの核心の6p目。難しいのは確か3~4手くらいだったと思うが、その間はボルトも近く、思い切って登れるだろう。花崗岩スラフェースらしく、スメッジング気味に足を置いてどんどん立ち込んでいく感じで、花崗岩てこんなふうに登るんだったなぁと思い出す。去年登った時はちょっと怖いなぁとか思いながら登った気がするが、1年経って記憶もないが、やはり再登はラクなものだ。
↓は最終pの終了点から下を見たの図。最後は藪スラブを登って終了。
踏み跡を進み、登山道のピーク(↓)。アプローチも駐車場から1分だが、下山も非常に整っていてラクだ。ここからは登山道で下山。枯葉が敷き詰められた急斜面の登山道を降りるが、今回下山用に買ってきてみた超軽量のベアフィットシューズは、フリクションゼロで滑りまくりながら歩いた。石も葉っぱも土も、まんべんなく滑るのでちょっと驚いた。クロックスのほうがマシというくらいであった。
下山後、道路から登ったルートを見上げるの図(↓)。
2日目。丸1日使えるこの日は、もちろん「大長征ルート」だ。このルートは何度来てもよい。そして宮崎の岩場を訪れるたび来たいルートだ。はじめはこの雌鉾岳のルートを登った後、そのまま雄鉾岳に移動してもう1本登ろうかと考えていたが、1本目をかなり早い時間に下りている必要があることや、アプローチがわからず時間を使ってしまう危険性を考えて、やめた。もう1本登るなら、大長征ルートと同じ雌鉾岳のエリアで登ればよいと考え直し、まずは皆さんに大長征ルートを楽しんでもらいたいなぁと、案内役気どりで登山道を歩き出した。↓は今回行くのをあきらめた雄鉾岳の正面壁である。
駐車場から30〜40分ほどで、↓の取り付きへの親切な分岐点につく。ここまでの登山道も気持ちのよいところだ。ひそかに楽しみにしていたアケボノツツジは、どうもすでに終わっていたようだが・・。
今日は終日晴れのはずだが、なかなか雲が取れない。曇った逆光の大スラブはちょっと陰鬱な雰囲気だ。まぁ登っていれば晴れてくるだろうと、今日は僕とOkさん、FさんとO君のペアで、まず僕が登り出した。
1~3pはスラブをほぼ直上である。2p目をOkさんが登っているときから、なにかポツポツきているような・・。4p目ではいい感じに雨となり、着ているものも、壁も、濡れ始める。どうしましょうかね、と登り途中のOkさんと話すが、4p目からはトラバースが始まりエスケープが難しくなっていくところだ。写真(↓)ではイマイチわかりにくいが、雨は「今日は雨です」というくらいの安定した降りようなので、ここでエスケープとした。Okさんに、濡れたスラブを左はじの藪までロープを伸ばしてもらい(↓)、ちょっと怖いフォロー回収で合流。藪には下山用の踏み跡があるのでひと安心だ。後続のFさんO君も2p目の終了点から藪にエスケープできたようだ。
取り付きに戻り、残念な気持ちでいっぱいの図(↓)。もっとも雨は一時的なものでそのうちやむだろう。ただし、このスラブはやはり晴れた最高の状態で登ってもらいたいし、ここまで濡れると乾くのを待つ時間も無駄だ。里に近い比叡のほうが登り出せる時間までが短いと思われたので、下山にする。
雨に濡れる大スラブ(↓)。後で、大長征ルートなら雨でも登れるし、登った、という偉人とお話しさせていただいたが・・。あと何回か登ってもっとこのルートを覚えたら、たしかにこれくらいの雨なら登れるかもしれない、と思ったが、妄想かなぁ。
天気待ちで、ボルダラーFさんの希望で「ホライゾン」がある大谷エリアへ。道がよくわからず、なかなかたどり着けなくて、車で彷徨っているうちに天気もピカピカに晴れた。ホライゾンの岩は、ものすごい大岩で驚いた(↓)。こんな大きな岩でボルダリングなんて、最高だろう。
↓はホライゾンのルーフ状。このエリアで登ってらっしゃった地元の方のご厚意で、マットをすこしの時間だけ貸していただいて、いくつかの課題をみんなで触ることができた。しかし残念なことに、O君がマットに着地した際、足を捻挫してしまったようだ。この後行こうとしていた比叡山3峰のルートは、O君は大事をとってお休みすることとなった。
移動し、14時前くらいから、比叡山3峰の左方カンテノーマルルートを登り出した(↓)。1p目はえらく簡単らしいので、ここだけ僕が登らせてもらった。というのも、案内役で臨んだメインイベントの大長征ルートを敗退して、大谷エリアを探して車をさんざん運転して、そしてO君が捻挫してしまって、など色々あり、残念ながら完全に疲れ切ってしまったからだ。一応1pだけ登って、ちゃんと左方カンテでラインが正しいことだけ確認して、あとはOkさんFさんに任せてちゃっかり付いていこう、などと思ったのだった。
↓は2p目の核心の5.9+。ナインプラスは実に怖いグレーディングだ。どんなナインプラスも、等しくあなどれない響きがある。Okさんが探りながら安定して登って行ったが、フォローで登ってみると、あらためて「宮崎流」のボルティングやライン取りが実感できた気がする。ちょうど写真(↓)の付近が核心でバランシーな数手と数歩が痺れたような・・。疲れていて、内容はあまり覚えていないのだが・・。
たしか3p目の終了点から下を見下ろした(↓)。川床から登り始めるウォーターカップⅡルートから、この左方カンテルートにつなげたら、すごい長いルートにできるなぁなどと思っていたが、またの機会。
右を見ると白亜スラブだと思われる、美しい強傾斜のスラブ(↓)。次回3峰に来たらぜひ触りたいと思うが・・、どうか。すばらしいルートであることだけは確かと思ったが。さらに後方の右にちょこんと屹立しているのはニードルだろう。
3~4p目はFさんが登った。4p目はⅣ級と簡単なようだが、右を並走するラストフロンティアの5.10bの核心部分?だけ、そちらを登っていったようだ(↓)。きっと根っからのフリークライマーのFさんにはまだまだ強度が物足りないのだろう。フォローのOkさんも僕も、同じように登ったら、意外にそこだけアクセントが効いていて楽しかった。
最終の5p目はOkさんだが、はじめ直上してしまい、直上は比叡の果てルートで、左方カンテはバンドを左に回り込んで・・・と、話して、ラインを修正し、左カンテを回り込んでルートを見たそうだが、ボルトもなく草もボーボーとのことで、登るならやはり直上のほうがよいかな、とのこと。最後だけラインを比叡の果てに変えて登ることに変更した(↓)。トポがなかったので後で確認したら、比叡の果ての最終pは5.10cだったようだ。3峰のこの辺はラインが錯綜していて、1本きちんと登るにはトポを細かく確認する必要があるが、一方で、こっちがいいと思えばラインを変えられるよさもあるともいえる。
比叡山3峰は下降が、1峰よりもさらに早くてラクだった。登ってきたルートと逆側の斜面(↓)を一気に下りる。ベアフィットシューズは滑りまくったが、あっという間に下山できた。
3日目。朝から晴れだ。昨日敗退した大長征ルートにあらためて来た。今日はOkさん、Fさん、僕の3人。O君は捻挫の影響で今日もお休みになった。残念だが仕方ない。僕はちょうど右手首が持病の腱鞘炎になってしまっていたこともあり、去年も登っているし、今回は案内役に徹し、OkさんとFさんでリードを回してもらって、全フォローでいいかなと思っていた。昨日と打って変わって早朝から日差しが煌々と照るなか、1p目の45mをOkさんリードで登り出した(↓)。
2p目(↓)もOkさん。上に見える2本の立木の、下側のほうまでの45m。ボルトはたしか2本。いや1本だったかな。
続く3p目もOkさんがロープを伸ばす(↓)。下から見える大きな立木までの35m。ボルトは見ての通り1本のみ(いや2本だったっけ?)。木の付近で右トラバースとなり、そこだけちょっと緊張しなくもない。
4p目はFさん・・と思っていたが、朝からスラブ登りでお疲れとのことで、僕が登らせてもらった(↓)。この30mほどの4p目から本格的にトラバースに入る。たしかボルトは2本。昨日はこのピッチで敗退したなぁ。
5p目も、お願いして、僕が登らせてもらった。全部フォローでと思っていたが、やはりリードで登りたくなってしまった。Fさんには核心の上部を登ってもらおう、と勝手ながら思い直し、5p目を登りながら、中央バンドで大滝左ルートに合流するまでロープを引く気になってしまっていた・・笑。5p目は個人的には一番好きなピッチ。3歩ほどクライムダウンから始まり、ずーっとトラバースする35m。最初はリードしないつもりだったので、ATCなどをビレイ点に置きっぱなしにしていて、環付きビナも1個しか持ってなかった。そんな状態でフォロー2人をビレイしなきゃいけなくなる初歩的なミスをおかしてしまい、申し訳なかった。1人ムンターで来てもらい、もう1人は持ってきたもらったATCで普通にビレイしたのだが。
↓は5p目を登るFさん。
6p目も続けてリードさせてもらった(↓)。いままでのいかにもスラブな内容からこのピッチはフェース的な内容となる。30mほど右上へ登り、中央バンドに至る。
6p目の終了点から、フォローで登ってくる2人を撮影(↓)。パッと思いついて、Okさんに壁を背にして立ってもらった。ロープ付いてるしスケールも違うけど、ちょっとアレックス・オノルドぽい感じになった。
7p目は中央バンドのトラバース(↓)。50mロープでは微妙に足りないと思い、コンテで進むことにしていたが、6p目を多少バンドトラバースしてから切ったため、長さ的に届いたようだった。ここまで僕がロープを引いた。
中央バンドから角度が立ってくる。8p目は核心の前のピッチ(↓)。ここでFさんに交代した。すこしお疲れモードだったFさんも、軽やかにどんどん登って行った。途中にある、いつか壊れるんじゃないかと思う軽い音がするフレークのところが、すこし気持ち悪い。30m。ボルトは・・3本くらいだったかな?忘れてしまった。
核心の9p目はOkさんが登った(↓)。上に見えているヘッドウォールは一の坊主だ。45mくらいと長く、20mほど直上気味に上がってから、ボルトをだいぶ右下にしながら左上にトラバースするラインなので、精神的要素も強いピッチだ。宮崎流のこのピッチは、けっこう登れるクライマーでも初めはやっぱり怖いものだろう。Okさんもラインから離れたクラックにカムで支点を取って、探りながら進んでいた。ラインが読み切れてからは、ラインからはずれロープの流れが悪くなるカムをいったんクライムダウンして回収してから、安定して登って行った。長年登っている玄人クライマーならではの、思わずうなってしまうほどの、うまいクライミングだった。
10p目は一の坊主からのごく簡単なトラバースである(↓)。岩溝にロープがスタックする可能性があるので、ロープを1本にして最終ピッチの取り付きである、二の坊主と三の坊主の間まで進んだ。
最後の11p目は10mほどの短いクラック。Okさんが登った。おまけのようなピッチであった。写真(↓)はフォローのFさん。
雌鉾岳ピーク(↓)。登り出しから3時間20分ほどで到着できた。3人だったことを考えれば、なかなか早かったかな。「日本最大のスラブ」と銘打ってあり、そうか、これが日本最大か!とあらためて感動もひとしおだ。何度登ってもよい。3人で記念写真を撮って、下降した。下降はピークの終了点から三の坊主基部まで懸垂20m。そこから数mクライムダウンして広いテラスに出て、下のブッシュ帯まで懸垂15mほど。そこからは踏み跡が取り付きまで伸びている。去年も今年もこんな感じで下降している。
帰りに大滝を見て、ぱっくり岩で休憩。クライマーが集まると、↓のようになる笑。去年はWさんがぱっくり岩から全裸で水に飛び込んでいたが・・、クライマーはおもしろい人種である。
毎年行きたいと思ってはいたが、結局1回行って終わりになってしまうんじゃないかと、思ったりもしていた。今年も行けて、本当によかった。また、新しい仲間と行けたので、今後の輪も少し広がったら嬉しいものだ。来年も・・と思っているが、来年は色々と家庭事情から厳しいかもしれない・・が、行けるチャンスがあるならば、できれば行きたいものだ。
今回も、庵鹿川に2泊しお世話になった。30年宮崎の岩場に通っているという大ベテランの方々や、去年知り合った地元山岳会のSさん、そして庵オーナーである偉人S氏、スーパーにいたスラブの天才K氏とも交流できた。「庵流」も、宮崎流のクライミングを知るうえで欠かせないものだと、理解している笑。ひとつだけ、O君の怪我は残念だったが、ビッグウォールを目指している彼もこれを機にさらに成長していってくれるものと信じている。Fさんは相変わらずイケイケだったし、Okさんの百戦錬磨なクライミングは勉強になった。
次は、あのルート行って、その後、あのルートで・・と、今から妄想が尽きない。