隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

大台ヶ原・中ノ滝登攀

中ノ滝 with Yさん、Sさん、Hさん

 

少し面倒くさい西大台利用調整地域の立ち入り手続きであるが、レクチャーではクライミングであることを考慮してくださり、早めの退出を許された。シオカラ谷の吊橋から沢に下り、左岸の旧登山道を拾って滝見尾根をゆっくり下った。途中の滝見台から、誰もがするであろう、中ノ滝と西ノ滝の雄姿を写真に収めた。

 

尾根の末端まで下りきると西ノ滝の目の前、沢床を埋める巨岩帯をすこし登ると中ノ滝である。下の写真は振り返って西ノ滝を見た。こちらもいつかは登りたいものである。

 

中ノ滝基部から下段を見上げた。

 

今回は4人なので、2人・2人にわかれた。私はYさんとペアを組み、10時半に私が先に登攀を開始させてもらった。なお、Yさんがハンマーを忘れたため、基本カムナッツだけで登ることにしたが、今回のラインではまったく問題なかった。下段の1p目は、一般にもっと右寄りのブッシュから取り付くようだが、右ブッシュと左の垂壁の真ん中くらいに位置する薄めのブッシュから、登ることにした。一段上がって左に少しトラバースし、そこから上へ上へと50m+αいっぱいに伸ばし、カムで切った。登り出しが多少悪いが、Ⅲ級+からⅣ級-の範疇であろう。

 

下の写真は1p目の終了点から見上げたところである。あとになって分かったことではあるが、1p目はどうやら左のカンテに向かってもっとトラバースし、水流に近づいたほうがよかったようだ。我ながらラインの読みが浅かった・・。2p目も、左にカンテをはさんで水が全く目に入らなくなったⅢ級程度の簡単な乾き登攀を、50mいっぱいに伸ばしただけであった。

 

2p終了点から中上段の水流がやっと目に入る。3p目は、ごく容易な30mほどの階段状で、下段の落ち口の右上の大テラスに至った。2p目をもう少し左にラインをとれば、落ち口近くに上がれたと思われたが、かなり右寄りに登ったため、大テラスに直接至ったようだ。ここで軽く休憩した。

 

テラスから下段落ち口を見下ろした。

 

4p目は右の凹角を登ることにした。凹角のラインは下段と異なり傾斜も強く、フリークライミングといった感じである。右のクラックと左のフェースを使ってステミングしたり、普通にフェースムーブがあったりと多彩である。何か所か緊張するムーブがあったが、Ⅳ級ほどの乾き登攀で、節理も豊富でカムもよく決まり、快適に登れた。下の写真はSさんが撮ってくれた、大テラスから凹角に向けて直上するラインで登り出した私である。

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4p目も50m+α伸ばし、小さなテラスで切った。

 

下の写真は4p終了点から上を見上げた。5p目はそのまま直上し、中段落ち口のテラスに乗り上がった。ここもⅣ級程度の乾き登攀で、フェースムーブ主体のピッチであった。

 

中段テラスから、いよいよ眼前に迫った上段を見上げた。傾斜はほぼ垂直となり、一気に難しさが増すように思われた。また、垂壁にルートを求める場合は、水流を多少なり浴びながらの濡れ登攀になるだろう。なかなか悩ましいところではあったが、パートナーのYさんが、できれば濡れたくない願望があったことと、冬の山行で少し足を痛めていたことを考えると、上段は巻くのが唯一の選択肢であった。6p目は、右側の階段状の岩を軽く登り、右上する薄い踏み跡がつけられたブッシュに入って、笹つかみ登攀。ルンゼに入り、少しブッシュが薄くなったあたりで木で切った。

 

登ったブッシュを振り返った。

 

7p目ではほぼ垂直に近いブッシュを左寄りに40mほど上へ上へと伸ばし、残置ハーケンが一本打たれた岩壁に出てピッチを切った。途中で枝が折れてフォールしそうになった。この7p目の垂直木登りが間違いなく核心ピッチであった。8p目からはSさん・Hさんのペアに先行してもらった。残置ハーケンの岩壁から数m登ると、落ち口へ至ると思われるバンドへ出た。どうやら7p目を切った岩壁沿いが、そのバンドだったらしい。バンドトラバースし、水流まであともう少しの距離になる場所に至った。

 

8p目を切ったところから少し進むと、水流が見える。9p目はHさんが引っ張ってくれた。トラバースから、落ち口直下数mほどの水流に出て、落ち口までは最初で最後の軽く濡れながらの登攀になった。ようやく、水と戯れることができた・・・と感無量になりながら、ごく短い濡れ登攀を楽しんだ。ぬめってはいるがⅢ級である。振り返れば素晴らしい光景が目に入る。

 

落ち口である。9pかけて登ってきたが、中段までの5pは完全なる乾き登攀。上段はブッシュから全巻きしたため、滝を登っている感じがあまりしなかったなぁ、というのが正直な感想である。特に1p目はカンテの向こうにトラバースして水流に近づくべきであったように思う。沢登りしようと思って来た身としては、少々ダイナミズムに欠ける内容であった。とはいっても、多くは2~3pで終わる「大滝登攀」だが、ここでは9p。250mを誇る壮大な大滝を近くに感じながら仲間4人で登攀できたことは、大きな喜びであったと言えよう。

 

濡れたかった人、濡れたくなかった人、それぞれ思い思いに落ち口で過ごす、の図。

 

上段の巻きに結構な時間を使ったため、落ち口に至ったのは16時半。そのまま沢を遡行したい気持ちもあったが、右岸尾根から遊歩道に出て、駐車場に戻った。

 

帰りの遊歩道では、簡単には来れない西大台の自然をいっぱいに感じながら歩く、というぜいたくな1時間を過ごせた。心落ち着く素晴らしい時間であった。

 

 

駐車場(7:40)~滝見尾根末端(9:10)~中ノ滝基部(9:50)~登攀開始(10:30)~下段テラス(11:30)~中段テラス(13:00)~落ち口(16:20)~駐車場(18:20)