隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

房総・小櫃川本流

  

石尊山北口参道付近の路肩スペースに停めて歩き出した。黄和田畑トンネルを過ぎ沢が近くなるとすぐに沢へ降りる踏み跡がみられ、労せず入渓した。
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川幅いっぱいに低く広がった黒い水面。小さく丸く粘土質なゴーロ。そこかしこにゴミが目立つ里の沢。まぁいいでしょう。ここから源流まで14kmほど沢床を練り歩くつもりである。あ! チェーンスパイク忘れた。あー、仕方ないね。
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砂地には猪や鹿など動物たちの足跡。
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沢に変化がなかったからか、ぼんやり歩いていたからか、そのうち出てくると思っていた堂沢橋という吊り橋は見なかった。見落としたのか、なくなったのか。
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これはキンダン川の一本手前に出てくる左岸支流。なんてことはない無名沢なのだが、2年前に下降に使ったとき朝日に照らされた融雪が輝く小雨のように降り注ぐ光景が見れて、とてもキレイだった。歩きながら思い出に軽く浸る。
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左岸支流を過ぎると沢床が一段上がる感じになり、その向こうは石畳のようなナメがどこまでも続いている。
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一段上がる所の一番左側が1m滝(笑)。この沢歩きで滝の音がよく聞こえたのはここだけだったっけ。静かな沢歩きで完結すると思っていたので、急に普段の沢登りで聞いている滝の音がしてきたので少しだけ驚いた。
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どこまでも広大なナメ。ただし冬だし、分かっていたことだが足元が滑る。置き足はうまく置けば問題ないけど、引き足が滑るんだよな。引き足が滑ると歩行のリズムが思わず崩れるので、地味に疲れにつながりスピードもさほど上がらない、というわけ。長い行程なのでスタスタ行きたいものなのだが。あと水深はおおむね足首からすね程度だが、ゆったりした黒い水面は光によく反射していて、水中が見にくい。要注意である。
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右岸に川廻し。かなり長いトンネル。
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キンダン川出合。看板まであるので間違うことはないだろうね。
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色は赤いが白岩橋。橋を過ぎるとすぐに・・
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地形図にも載っている白岩。右岸が30mほど白い壁になっていた。
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地形図ではよく分からないが、Googleマップで穴の口となっているところ。沢は目の前の丸い配管(?)の手前で右に折れる。配管の堰の向こう側に錦沼があるのだろう。本来水流は上流で蛇行して錦沼を経る流れだったものを、川廻しで直線にしたということか。ちょっとした観光地のようにもなっているのか。
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こちらが穴の口。どれくらいだろ。30mくらいか。手前がちょっと深いので巻きかなぁと思ったが、左岸の水中に足場があり普通にへつれた。トンネルへの乗り移りが遠くて1歩だけ悪いが、なんと残置ハーケンが2本あり、地味に突破(笑)されているようだ。
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中は暗くヘッドライト必須。一か所また深めのところがあり、それかわすため1歩のスメアリング。あとはスタスタ歩ける。
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穴の口を過ぎふと気づけば沢幅が狭まってきた。
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名前の分からない橋。
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高曇りの朝だったが10時をまわりようやく陽光が差してきた。キレイだなぁ。
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四方木の川廻し。てっぺんには普通に道が通っている。この川廻しが地味に難物だった・・。
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見るからに深い。水に入ってみると思った以上に深く、堆積した落ち葉にズブズブと足が沈み込み股まで水に潜る。いや止めだ止め。無駄にずぶ濡れになったところで水線は諦め巻くことにする。
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が、巻きのルート取りがまったく冴えてなかった。地形的に緩そうな左岸を選択してみたが、地形図の枝沢の存在を見落としていた。枝沢、というか枝ゴルジュへの急斜面のクライムダウンは残り4mで行き詰まり計画的(?)滑落でなんとか降りた。が、枝沢から本流にはスタスタ戻れると思っていたが、すべやかな小滝に阻まれ不可。本流と枝沢の中間尾根を登ってしばらく歩いて崖をかわし獣道でようやく戻った。30分以上使った。最短で小さく巻くなら右岸だったか。でも両岸とも崖記号なのでどうかね。地形図に示されている山道で巻くのが一番お利口だったか? 下の写真は、滑落した急斜面。滑落のラインが黒くなってる。
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枝沢を下降したが、
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小滝に阻まれ、
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中間尾根を登り、
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やっと沢に戻った。
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一応川廻しまで戻って一枚。水線どおしで進めば1分だったが、なんやかんやで30分以上使ってしまった・・。f:id:Kakuremino:20210104160917j:image

ちょっと癒されてからまた歩く。
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また名前の分からない橋。
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橋を過ぎるとすぐに四方木不動滝。ちなみに地形図では50mほどずれている。ここでやっと休憩し、おにぎり一個。
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滝見台もある。さきほどの川廻しで疲れたので、巻きは無駄に独自路線を行くのを止め、地形図にある山道を拾った。なんの問題もなく5分で沢に戻れた。
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さらに水量が減った感がある。
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204mくらいの二俣(?)。左俣は細いが水流あり、右俣は広いが伏流している。沢幅から本流は右かなと思って少し進んでみたが水は復活せず、沢は蛇行し、代わりに出てきたのは・・、f:id:Kakuremino:20210104161140j:image

このバックウォーターのような沼(?)。地形図を見ても方向が判然とせずとりあえずそのまま沼の端を歩く。あ、そうか。左俣出合のほうに向かっているのだ。
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左俣を上から見下ろす。おそらくここはかつて川廻しだったのが天井が落ちたのだろうか。地形図を見ても細かい蛇行部分は表記されておらずよく分からないが。とにかく水流があるほうに進むのが正解なのだと分かった。ひとつ学んだ。
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さらに沢は小さくなった。このあたりから時々倒木で沢が埋まるポイントが出てくるようになった。
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地形図にある沢を横断する山道(?)を過ぎると淵。この水溜まりのような淵は両岸高く巻きは不可能。フリクションに乏しくへつりも不可能。ここまで来たら仕方ない。意を決して腰上まで濡らして通過した。足が水底の泥土に沈み込むのがやや不快。
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思わず足を踏み外してドボンしてしまいそうなポットフォール。
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沢は一層水量が減り倒木に塞がれる箇所も増えてくる。基本は両岸とも土壁状に立っているので正面から頑張って通過することが多いが、ここはめずらしく両岸が緩やかだったので斜面を巻き歩いた。f:id:Kakuremino:20210104161147j:image

これまで南へ伸びていた沢は東に折れ、いくつか山道と出合うが、どのように山道がつけられているかは分からない。それらは地形図は載っておらず、かつての杣道や生活道だったのだろう。
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365mピーク(?)手前の290m二俣。思ったより倒木で埋まるポイントが多くなかったので、まだ沢床を歩こうと思って本流っぽい左俣に進むことにした。水は伏流したり水溜まりのようになったりではあったが、完全には涸れていなかったので、できれば水涸れまで沢を歩けたらよいと思った。
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左俣を少し進むとついに水は土に消えていった。
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そして310m二俣で両方とも倒木で埋まるのを確認し、中間尾根を登ることにして沢から離れた。
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中間尾根を登る。
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375mの名もなき小ピークで終わりにした。ここまで沢を14kmも歩いたので少々お疲れモードであり、休憩してまたおにぎりを一個食べた。
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あとは道に下りて全部で10kmほどかけて石尊山への縦走路を歩いて戻った。途中で完全お疲れモードになり、一度だけ休憩しておにぎりを二個食べた。
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お疲れモードで歩いてきたが、気が付けば日没が迫ってくる。何となく思いつきで石尊山山頂で夕日を眺めるのを目標に定め、早歩きで歩いたがほんの数分、間に合わなかった・・、と思ったら山頂は植林で展望なし。石尊山はおまけ程度に考えていて何も調べていなかったので、思わず苦笑い。
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あとは暗くなってきた登山道をバーッと下りた。
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冬に一度は房総の沢を歩きに来たいなと思っていて、今回はその三回目でした。昨年腰を痛めたことから長い距離を歩く山行を控えていましたが、やっとマシになりそろそろ長く歩きたいなぁと思いこの計画にしてみました。久しぶりでかなりお疲れモードになりましたが、不整路を沢山歩けたので満足です。高低差がなく適度に滑った房総の沢は不整路の歩行練習にもってこいだと思います。

小櫃川はほかの様々な房総の沢と同様、幾多の山道や川廻しなど人の生活の残滓が色濃く残る沢でした。そのそれぞれに過去の謂れがあり、現在も親しまれているところもあるのだと思いますが、地形図とGoogleマップしか見ていない私には何も分かりません。それらが数十年か100年か前に現役だったころは、どんな風に人が行き交っていたのだろうか、と無知な想像力を働かせながらひっそりと歩くのみです。

 

465号線路肩・起点(8:00)~黄和田畑トンネル先から入渓(8:15)~キンダン川出合(9:25)~四方木不動滝(11:25)~375m小ピーク(13:50)~石尊山(16:35)~起点戻り(16:55)

ルート☟

www.yamareco.com