隠レ蓑

お山の日記と、日々の懊悩

鈴鹿・犬上川 滝洞谷

11/15 滝洞谷単独

 

前週にもこの滝洞谷にきていて、そのときはゴルジュが深い水たまりだらけになっているのを確認して、入り口で撤退した。4人だったので時間もかかりそうだったし、涸れ谷と聞いてきたため、水に浸かって遡行する気にはならなかった。しかし、水流のないぬめった石灰岩ゴルジュに、深く汚い水たまり・・・、個人的には心ときめくものを感じずにはいられなかった。11月という適期だったこともあり、平日ムリくり休んで単独で再訪することにした。

前日は雨だったので、ひょっとしたら水流もあるかも、とすこし期待したが、残念ながらそれはなかった。水たまりに浸かるだろうからと思い、汚れ防止も兼ねてセミドライを着てきてみたが、それよりなにより、ここは鹿の死骸も浮いていたかもしれない水たまり。水を飲んだら死ぬかも、みたいな異質な緊張感があり、その意味でも痺れた(?)。

 

入り口の水たまりは右岸から巻いて懸垂で下りた。すこしは増水しているのかと思ったが、先週きたときと水量は変わらず、水がより濁っていた。

 

洞窟ゴルジュの6m滝。右壁の左上クラックにハーケンが連打されていて、エイド架け替えで越えた。残置で架け替えするだけなので難しさはない。一瞬フリーで、と思って取り付いてみたのだが、クライミングシューズでもぬめぬめで足が置けず、そもそもクラックまですらたどり着けず、という体たらくだった。

 

そのすぐ上部に、いくつか拝見した記録でヒールフックで越える、と書いてあったところが。こちら向きのステミングで1段上がって、ガバをとってから体を反転させれば簡単だった。普通にヒールは出てこなかった・・。

 

 

8mほどのスラブ滝があったが、右岸から簡単に巻ける。最初は取り付いてみようかと思ったが、この釜は異様に深く濁っていて、入ったら吸い込まれてしまいそうな妄想がして、おそれをなして巻いた。何か棲んでいそうな雰囲気でちょっと怖かった。

 ↓深い釜

 

5mほどの滝。へつって奥から一段上がり、U字の落ち口の手前までは簡単だが、そこからちょっとぬめっていて、乗り込んでいくムーブが小悪くて不確かに感じられたので、1ポイントエイドで抜けた。

 ↓落ち口から

 

これなんか写真を見たらすごく悪そうだが、記憶にまったくないので簡単だったのだろう。

 

振り返ると感じのよいV字になっていた。

 

井戸底ゴルジュの始まり。見映えする見どころポイントである。

 

井戸底の8m。意外にプロテクションは悪くなく過不足なくカムが使え、安心して登れる。ジャミングもできるし、普通にステミング登りでも問題ない。Ⅳ級くらいに思った。形状的に水流があるときはクラックが水の中になるので、もっと悪く感じると思われる。今日はぬめっているだけで、それほどでもなかった。

 井戸底からの登り返し

 

すぐ上に釜が腰下の小汚い水たまりとなった、10mほどのスラブ滝。これが非常に悪く、滝洞谷のなかで一番の核心になった。とりあえず荷物を背負った状態で水たまりを漕いで、下部でU字溝を形成しているスラブの末端まで進んだ。そこからU字の左壁に断続的に走っていた縦溝に両足スメア、右壁に右肩と背中を押しつける、のムーブで4mほど上がった。その上は本当にスラブでフリーソロでは厳しそう(落ちても滑り台ではあるが、着水した拍子に水を飲んだら死ぬかも、と妄想すると厳しい)。右壁にいくつか穴が開いており赤キャメでアンカーを作り空身になった。スラブ面の小さなリスになんとかナイフブレードを入れて支点とし、1歩かなり悪いスメアをこなして、あとは右壁に続くホールドをたどって落ち口まで抜けられた。スラブ通しで登れたので結構充実した。

釜に沈むスラブ

上下から見たスラブ

登り返しで核心を

 

スラブ滝の上部では、いよいよ足がつくかつかないかの水たまりになり、セミドライでは結構浸水してしまい、微妙におぞ気が立った。水中からだとのっぺりした岩に乗り上がるのも大変だった。

 

迷路ゴルジュ。下部のコケコケゾーンは衝撃的にぬめっていて、取り付いてギョッとして一回クライムダウンして仕切り直した。クライミング自体は簡単そうだったのでフリーソロで取り付いた。ゴルジュ上部のスラブもほどよくホールドがあり、さっき登った悪いスラブ滝と比べれば問題ないレベルだった。

 ↓円形劇場様空間

 本当にスラブは楽しい

 

最後に出てくる深く汚いポットフォール状の水たまりをもった1m?滝。足がつかなそうではあったが、意を決して水に入り微妙な立ち泳ぎ。最初は左の甘いリップをもって右足で乗り込もうとしたが、手がぬめっていて無理。右壁にアンダーガバがあったのでそれを使って左足で乗り込み、なんとか越えられた。1度落ちて水を被りそうになり焦った。柄にもなく、一手一手吠えながら登った。

 

それからすぐ谷が開け、穏やかな水流が出てくる。普通の里の沢にガラッと変わり、終わった感でひとしきり心がいっぱいになる。変化に富んでいて、不思議な沢である。

 植林感満点の詰め

 

詰めが考えていたよりずっと長く疲れた。個人的なこだわりもあり、沢通しで稜線までと思い、足が棒になったが、うんざりする登りを時間に追われながらこなし、稜線へ出た。まあるい鈴ヶ岳の山容や送電線、遠望できる琵琶湖・・。茶野から眺める冬枯れの始まった里の自然は、どこか郷愁をさそい、悪くなかった。もう少し早めに出発し、ここでもう少しゆっくりしたかった、と思った。

 

時間は16時となり、日没まであまり時間がなく、急いで下山を開始した。廃登山道とはいっても踏み跡たどれば問題ないだろう・・と思っていたが、本当に廃登山道のようで、断続的にテープはあったが、結局地図を読みながら下山した。600m付近から仕事でも使われているとみられ、普通の登山道になり、あとは快適下山であった。

 

駐車スペース(8:50)~洞窟ゴルジュ(9:20)~井戸底ゴルジュ(11:30)~迷路ゴルジュ(13:20)~ゴルジュ終了(13:50)~茶野(15:40)~駐車スペース(16:50)